総務大臣賞
2023年度 統計データ分析コンペティション / 高校生の部
生活の形態と
女性の社会進出
⏱️ 推定読了時間: 約42分
女性の時間使用パターンから読み解く、地域別の社会進出と少子化の関係
SSDSE-D 社会生活基本調査
SSDSE-B 社会・人口統計体系
相関分析
重回帰分析
Wardクラスター分析
🎯 この記事を読むと何ができるようになるか
- 研究の核心:「生活の形態と女性の社会進出」の問題意識と分析アプローチ
- 分析手法:重回帰分析で「複数の要因がどの程度結果に影響するか」を同時に推定する方法
- 分析手法:相関係数(Pearson・Spearman)で2変数の関係の強さと向きを定量化する方法
- 分析手法:パネルデータ固定効果モデルで「都道府県固有の見えない差」を統制した因果推論
- 結果の読み方:係数・p値・図表から「何が言えて何が言えないか」を判断する力
- 応用:同じデータと手法を使って、別の問いを立てて分析する発想
📥 データの準備(再現コードを動かす前に)
このページの分析を自分で再現するには、以下の手順でデータを準備してください。コードの編集は不要です。
1
データをダウンロードする
統計センターの
SSDSE 配布ページから、以下のファイルをダウンロードします。
SSDSE-D-2023.csv ← SSDSE-D(都道府県の指標)
📥 直接DL
SSDSE-B-2026.csv ←
SSDSE-B(都道府県データ)
📥 直接DL
⬇ SSDSEダウンロードページを開く
2
ファイルを所定のフォルダに配置する
ダウンロードした
CSVを、プロジェクトの
data/raw/ フォルダに入れます。
2026 統計・データ解析コンペ/
├── code/
│ └── 2023_H1_daijin.py ← 実行するスクリプト
└── data/
└── raw/
SSDSE-D-2023.csv ← ここに置く
SSDSE-B-2026.csv ← ここに置く
3
スクリプトをそのまま実行する
ターミナルでプロジェクトルートに移動し、以下を実行します。
python3 code/2023_H1_daijin.py
図は
html/figures/ に自動保存されます。
1. 研究の背景と問い
女性の社会進出(就業・キャリア形成)と少子化の関係は、日本の政策論議における核心的な問いの一つです。
「女性が仕事をするほど子どもが減る」という議論と、「支援が充実すれば両立できる」という議論が対立してきました。
本研究は、時間使用データ(1日の時間配分)という直接的な指標から、
47都道府県の女性生活パターンを比較し、合計特殊出生率(TFR)との関係を統計的に検証します。
リサーチクエスチョン
女性が仕事に費やす時間が多い都道府県ほど、合計特殊出生率(TFR)は低いのか?
また、保育所の整備は仕事時間とTFRの関係をどう調整するのか?
そして、生活時間パターンで類型化した都道府県クラスターは、TFRにどう対応するのか?
主な時間使用変数
7種
仕事・家事・育児・睡眠 等(分/日)
回帰R²
0.415
TFR ~ 仕事+保育所+消費支出
分析の流れ
SSDSE-D
女性時間使用
47都道府県
+
SSDSE-B
TFR・保育所
消費支出
→
相関分析
ヒートマップ
→
重回帰
TFR規定要因
→
Ward
クラスタリング
2. 使用データと変数
データソース
| データセット | 内容 | 対象年 |
| SSDSE-D-2023(社会生活基本調査) | 都道府県別・男女別の生活時間(分/日)。仕事・家事・育児・睡眠・介護等13カテゴリー | 2021年(第11回) |
| SSDSE-B-2026(社会・人口統計体系) | 都道府県別の人口・労働・保育・消費支出等112変数 | 2022年度 |
主要変数の定義
| 変数 | 定義・計算方法 | 役割 |
| 女性仕事時間 | 1日あたり仕事に費やす時間(分/日)、女性のみ | 説明変数(社会進出の代理指標) |
| 女性家事時間 | 1日あたり家事時間(分/日)、女性のみ | 説明変数・クラスタリング変数 |
| 女性育児時間 | 1日あたり育児時間(分/日)、女性のみ | 説明変数・クラスタリング変数 |
| 合計特殊出生率(TFR) | SSDSE-B「合計特殊出生率」(2022年度) | 目的変数 |
| 保育所密度 | 保育所等数 ÷ 総人口(女)× 100,000 | 説明変数(保育環境の充実度) |
| 消費支出 | 二人以上世帯の月間消費支出(万円) | 説明変数(所得水準の代理) |
社会生活基本調査について(時間使用調査)
総務省統計局が5年ごとに実施する大規模統計調査。10歳以上の国民を対象に、
1日24時間の行動を詳細に記録する「生活時間調査」です。都道府県・男女・年齢階級別の集計が公表されており、
女性の就業行動や家事負担の地域差を分析する際の基礎データとなります。
3. 図1:
相関ヒートマップ
3. 分析1:相関ヒートマップ
まず変数間の関係を一覧的に確認することが有効だと考えられる。
その理由は女性の時間使用・保育環境・出生率という多くの変数が絡み合っており、いきなり回帰モデルを組むと多重共線性で結果が歪む可能性があるからである。
ここでは女性仕事時間・家事時間・保育所密度・TFRの相互関係に着目し、相関ヒートマップという手法を用いる。
図1:女性時間使用変数・合計特殊出生率・保育所密度・消費支出の相関ヒートマップ(都道府県別、N=47)。赤が正の相関、青が負の相関。数値はPearson相関係数 r。
📌 この相関ヒートマップの読み方
- このグラフは
- 複数の変数ペア間の相関係数(−1〜+1)を色の濃淡で示した行列図。
- 読み方
- 濃い赤(または青)が強い正(または負)の相関。対角線は常に1.0。
- なぜそう解釈できるか
- 説明変数どうしの相関が高い(|r| > 0.8)と多重共線性の警告サイン。
主要な相関の読み取り
| 変数の組み合わせ | 相関係数 r | 解釈 |
| 女性仕事時間 × TFR | r = +0.326, p = 0.025 | 仕事時間が長い都道府県でTFRがやや高い(有意) |
| 女性家事時間 × TFR | r = −0.103, p = 0.490 | 家事時間とTFRの関係は統計的に非有意 |
| 保育所密度 × TFR | r = +0.559, p < 0.001 | 保育環境が充実するほどTFRが高い(強い正の相関) |
| 女性仕事時間 × 家事時間 | r = −0.456, p = 0.001 | 仕事時間が長いほど家事時間が短い(トレードオフ) |
| 女性仕事時間 × 育児時間 | r = −0.122, p = 0.413 | 仕事時間と育児時間は弱い負の関係(非有意) |
重要な発見:仕事時間とTFRの正の相関
一見「仕事時間が増えると少子化が進む」と予想されますが、都道府県レベルでは正の相関(r=+0.326)が見られます。
これは、女性の就業機会と保育環境が同時に整備されている地域では、
仕事と子育ての両立が実現していることを示唆しています。
DATA SCIENCE POINT 1
時間使用調査の分析における留意点
SSDSE-Dの時間使用変数は「すべての人の平均時間(非従事者を含む0分を含む平均)」である点に注意が必要です。
仕事時間の都道府県差は、就業率の差と1人あたり労働時間の差の両方を反映しています。
import pandas as pd
import numpy as np
from scipy import stats
# SSDSE-D 女性データの読み込み
df_d = pd.read_csv(DATA_D, encoding='cp932', header=1)
df_d_f = df_d[(df_d['男女の別'] == '2_女') &
(df_d['地域コード'] != 'R00000')].copy()
# 相関係数と有意確率の算出
corr_vars = ['仕事', '家事', '育児', '睡眠', '合計特殊出生率', '保育所密度']
corr_matrix = df_merged[corr_vars].corr()
# Pearson検定(p値付き)
r, p = stats.pearsonr(df_merged['仕事'], df_merged['合計特殊出生率'])
print(f"仕事時間 vs TFR: r={r:.4f}, p={p:.4f}")
📝 コード
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31 | def save_fig(fig, name):
path = os.path.join(FIG_DIR, name)
fig.savefig(path, dpi=150, bbox_inches='tight')
plt.close(fig)
print(f" 保存: {path}")
# ── 図1: 相関ヒートマップ ─────────────────────────────────────
fig, ax = plt.subplots(figsize=(9, 7))
n = len(CORR_LABELS)
mat = corr_df.values
im = ax.imshow(mat, cmap='RdBu_r', vmin=-1, vmax=1, aspect='auto')
fig.colorbar(im, ax=ax, fraction=0.046, pad=0.04, label='相関係数 r')
ax.set_xticks(range(n))
ax.set_yticks(range(n))
ax.set_xticklabels(CORR_LABELS, rotation=45, ha='right', fontsize=10)
ax.set_yticklabels(CORR_LABELS, fontsize=10)
for i in range(n):
for j in range(n):
val = mat[i, j]
color = 'white' if abs(val) > 0.5 else 'black'
ax.text(j, i, f'{val:.2f}', ha='center', va='center',
fontsize=8.5, color=color, fontweight='bold')
ax.set_title('図1:女性時間使用・TFR・保育所密度の相関ヒートマップ\n(都道府県別、2022〜2023年)',
fontsize=13, fontweight='bold', pad=14)
fig.tight_layout()
save_fig(fig, '2023_H1_fig1_heatmap.png')
|
▼ 実行結果
このステップは print はしません。データや図が裏で更新されただけ。次のステップへ進みましょう。
💡 解説
fig, ax = plt.subplots(...) — 図全体(fig)と軸(ax)を作る定番。以降は ax.bar(...) 等で操作。fig.savefig(..., bbox_inches='tight') — 余白を自動で詰めて保存。plt.close() でメモリ解放。
💡 Python TIPS Seriesの .map() は「1対1の置き換え」、.apply() は「関数を当てる」。辞書なら .map()、ロジックなら .apply()。
📝 コード
| # ── 図2: 散布図(女性仕事時間 vs TFR)+ 回帰直線 ─────────────
fig, ax = plt.subplots(figsize=(8, 6))
x_val = df['仕事'].values
y_val = df['合計特殊出生率'].values
r, p = stats.pearsonr(x_val, y_val)
|
▼ 実行結果
このステップは print はしません。データや図が裏で更新されただけ。次のステップへ進みましょう。
💡 解説
fig, ax = plt.subplots(...) — 図全体(fig)と軸(ax)を作る定番。以降は ax.bar(...) 等で操作。stats.pearsonr(x, y) — Pearson相関係数 r と p値を同時に返します。
💡 Python TIPS [式 for x in リスト] はリスト内包表記。forループでappendする代わりに1行でリストを作れます。
📝 コード
| # 散布図(クラスター色)
for g in sorted(df['cluster'].unique()):
mask = df['cluster'] == g
ax.scatter(df.loc[mask, '仕事'], df.loc[mask, '合計特殊出生率'],
s=70, color=CLUSTER_COLORS[g - 1], alpha=0.85, zorder=3,
label=f'グループ {g}')
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▼ 実行結果
このステップは print はしません。データや図が裏で更新されただけ。次のステップへ進みましょう。
💡 解説
- このステップでは前のステップで作ったデータを加工しています。コードを上から順に読んでみてください。
💡 Python TIPS r, p = stats.pearsonr(...) — Pythonは複数戻り値を同時に受け取れる(タプルアンパック)。
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74 | # 回帰直線
xfit = np.linspace(x_val.min(), x_val.max(), 100)
slope, intercept, *_ = stats.linregress(x_val, y_val)
ax.plot(xfit, slope * xfit + intercept, color='#C62828', linewidth=2,
linestyle='--', label=f'回帰直線(r={r:.3f}, p={p:.3f})')
# 都道府県ラベル(外れ値のみ表示)
mean_x, std_x = x_val.mean(), x_val.std()
mean_y, std_y = y_val.mean(), y_val.std()
for _, row in df.iterrows():
if (abs(row['仕事'] - mean_x) > 1.3 * std_x or
abs(row['合計特殊出生率'] - mean_y) > 1.3 * std_y):
ax.annotate(row['都道府県'],
(row['仕事'], row['合計特殊出生率']),
textcoords='offset points', xytext=(4, 4),
fontsize=8.5, color='#333')
ax.set_xlabel('女性仕事時間(分/日)', fontsize=12)
ax.set_ylabel('合計特殊出生率(TFR)', fontsize=12)
ax.set_title('図2:女性仕事時間と合計特殊出生率の関係\n(都道府県別、N=47)',
fontsize=13, fontweight='bold')
ax.legend(fontsize=10, loc='upper right')
ax.grid(True, linestyle='--', alpha=0.4)
sig_str = '有意(p<0.05)' if p < 0.05 else '非有意(p≥0.05)'
ax.text(0.02, 0.05, f'r = {r:.3f} {sig_str}',
transform=ax.transAxes, fontsize=10,
bbox=dict(boxstyle='round,pad=0.4', facecolor='#FFF9C4', alpha=0.9))
fig.tight_layout()
save_fig(fig, '2023_H1_fig2_scatter.png')
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▼ 実行結果
このステップは print はしません。データや図が裏で更新されただけ。次のステップへ進みましょう。
💡 解説
stats.linregress(x, y) — 単回帰の傾き・切片・r値・p値・標準誤差を返します。使わない値は _ で受け取り。for _, row in df.iterrows() — DataFrameを1行ずつ取り出すループ。1点ずつ描画したいときに使用。
💡 Python TIPS x if cond else y は三項演算子。リスト内包表記と組み合わせると、forとifを1行で書けます。
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93 | # ── 図3: Ward デンドログラム ──────────────────────────────────
fig, ax = plt.subplots(figsize=(14, 5.5))
pref_labels = df['都道府県'].tolist()
dend = dendrogram(Z, labels=pref_labels, ax=ax,
color_threshold=Z[-(n_clusters - 1), 2],
leaf_rotation=90, leaf_font_size=9.5)
ax.axhline(y=Z[-(n_clusters - 1), 2], color='#C62828',
linestyle='--', linewidth=1.4, alpha=0.8, label='4クラスター分割点')
ax.set_title('図3:女性時間使用パターンによる47都道府県のWardクラスタリング\n(標準化後7変数)',
fontsize=13, fontweight='bold')
ax.set_xlabel('都道府県', fontsize=11)
ax.set_ylabel('Ward距離', fontsize=11)
ax.legend(fontsize=10)
ax.grid(True, axis='y', linestyle='--', alpha=0.3)
fig.tight_layout()
save_fig(fig, '2023_H1_fig3_dendrogram.png')
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▼ 実行結果
このステップは print はしません。データや図が裏で更新されただけ。次のステップへ進みましょう。
💡 解説
fig, ax = plt.subplots(...) — 図全体(fig)と軸(ax)を作る定番。以降は ax.bar(...) 等で操作。ax.axhline / ax.axvline — 水平/垂直の点線。平均線や基準線として定番。
💡 Python TIPS df[col](1列)と df[[col1, col2]](複数列)でカッコの数が違います。リストを渡していると覚えるとミスを減らせます。
📝 コード
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109 | # ── 図4: グループ別TFR箱ひげ図 ───────────────────────────────
fig, ax = plt.subplots(figsize=(8, 6))
groups = sorted(df['cluster'].unique())
data_by_group = [df[df['cluster'] == g]['合計特殊出生率'].values for g in groups]
labels_g = [f'グループ {g}\n(N={len(d)})' for g, d in zip(groups, data_by_group)]
bp = ax.boxplot(data_by_group, patch_artist=True, notch=False,
medianprops=dict(color='white', linewidth=2.5),
whiskerprops=dict(linewidth=1.4),
capprops=dict(linewidth=1.4),
flierprops=dict(marker='o', markersize=5, alpha=0.6))
for patch, color in zip(bp['boxes'], CLUSTER_COLORS):
patch.set_facecolor(color)
patch.set_alpha(0.8)
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▼ 実行結果
このステップは print はしません。データや図が裏で更新されただけ。次のステップへ進みましょう。
💡 解説
fig, ax = plt.subplots(...) — 図全体(fig)と軸(ax)を作る定番。以降は ax.bar(...) 等で操作。
💡 Python TIPS s[:-n]「末尾n文字を除く」/s[n:]「先頭n文字を除く」。スライス [start:stop:step] はリスト・タプル・文字列共通の基本ワザです。
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134 | # グループ別平均の時間使用特徴をラベルとして付加
group_char = {
1: '(仕事時間\n多め)',
2: '(家事・育児\n多め)',
3: '(バランス型)',
4: '(睡眠・休養\n多め)'
}
# 実データに基づく特徴ラベル(グループ平均で再計算)
g_means = df.groupby('cluster')[cluster_vars].mean()
for i, g in enumerate(groups):
row = g_means.loc[g]
top_var = row.idxmax()
var_map = {'仕事': '仕事時間↑', '家事': '家事↑', '育児': '育児↑',
'睡眠': '睡眠↑', '介護・看護': '介護↑',
'買い物': '買物↑', '休養・くつろぎ': '休養↑'}
char_str = var_map.get(top_var, top_var)
ax.text(i + 1, data_by_group[i].min() - 0.04,
f'({char_str})', ha='center', va='top', fontsize=8.5, color='#555')
ax.set_xticklabels(labels_g, fontsize=11)
ax.set_xlabel('クラスターグループ(女性時間使用パターン)', fontsize=12)
ax.set_ylabel('合計特殊出生率(TFR)', fontsize=12)
ax.set_title('図4:女性生活時間パターンのクラスター別 合計特殊出生率の分布\n(都道府県別、N=47)',
fontsize=13, fontweight='bold')
ax.grid(True, axis='y', linestyle='--', alpha=0.4)
|
▼ 実行結果
このステップは print はしません。データや図が裏で更新されただけ。次のステップへ進みましょう。
💡 解説
df.groupby('列').apply(関数) — グループごとに関数を適用。時系列や地域別の集計でよく使います。
💡 Python TIPS np.cumsum(arr) は累積和、np.linspace(a, b, n) は「aからbを等間隔でn個」。NumPyの定石です。
📝 コード
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145 | # Kruskal-Wallis 検定
stat_kw, p_kw = stats.kruskal(*data_by_group)
sig_str_kw = f'Kruskal-Wallis H={stat_kw:.2f}, p={p_kw:.3f}'
ax.text(0.98, 0.97, sig_str_kw, transform=ax.transAxes,
ha='right', va='top', fontsize=9,
bbox=dict(boxstyle='round,pad=0.4', facecolor='#E3F2FD', alpha=0.9))
fig.tight_layout()
save_fig(fig, '2023_H1_fig4_boxplot.png')
print("\n全図保存完了。")
|
▼ 実行結果
💡 解説
- このステップでは前のステップで作ったデータを加工しています。コードを上から順に読んでみてください。
💡 Python TIPS f-stringの書式 {値:.2f}(小数2桁)、{値:,}(3桁区切り)、{値:>10}(右寄せ10桁)など、覚えると出力が一気に整います。
4. 図2:
散布図
4. 分析2:女性仕事時間と合計特殊出生率
図2:都道府県別の女性1日仕事時間(分)と合計特殊出生率(TFR)の散布図。点の色はWardクラスターグループ(4分類)。破線は最小二乗回帰直線。
📌 この散布図の読み方
- このグラフは
- 横軸(x)と縦軸(y)に2変数を取り、各都道府県(または自治体)を点で描いたグラフ。
- 読み方
- 点の並びに右上がりの傾向があれば正の相関、右下がりなら負の相関。点が直線に近いほど相関が強い。
- なぜそう解釈できるか
- 回帰直線(赤線など)の傾きが回帰係数に対応する。直線から大きく外れた点が外れ値で、特異な地域を示す。
散布図から読み取れること
各点は1都道府県を表します。点の色はWardクラスタリングで分類された4グループを示しています。
回帰直線(r = +0.326, p = 0.025)は右肩上がりを示しており、
女性仕事時間が長い都道府県ほどTFRがやや高い傾向があります。
注意:生態学的誤謬(Ecological Fallacy)
都道府県レベルの正の相関が「個人レベルでも仕事時間が長い女性の方が子どもが多い」を意味するわけではありません。
地域レベルの分析結果を個人レベルに適用することを生態学的誤謬といいます。
地域として保育環境が充実している→女性が働きやすい→TFRも高い、という第3変数(交絡変数)が
背後にある可能性を常に考慮する必要があります。
沖縄県(グループ4)に注目
散布図の右上に位置する沖縄県は、女性仕事時間が比較的高く(平均的な範囲内)、
TFRが1.70と全国最高水準を示す特異点です。
沖縄県は保育所密度も高く、独自の地域文化(拡大家族による育児支援等)も高TFRの背景と考えられます。
DATA SCIENCE POINT 2
散布図の描き方:クラスター別色分けの意義
単純な散布図ではなく、クラスタリング結果を色で重ね合わせることで、
「回帰直線の傾向」と「グループ構造」を同時に確認できます。
クラスターをまたいだ外れ値(沖縄県等)の識別にも有効です。
from scipy import stats
import matplotlib.pyplot as plt
fig, ax = plt.subplots(figsize=(8, 6))
COLORS = ['#1565C0', '#E65100', '#2E7D32', '#6A1B9A']
for g in sorted(df['cluster'].unique()):
mask = df['cluster'] == g
ax.scatter(df.loc[mask, '仕事'], df.loc[mask, '合計特殊出生率'],
s=70, color=COLORS[g-1], alpha=0.85, label=f'グループ {g}')
# 最小二乗回帰直線
slope, intercept, r, p, _ = stats.linregress(df['仕事'], df['合計特殊出生率'])
xfit = np.linspace(df['仕事'].min(), df['仕事'].max(), 100)
ax.plot(xfit, slope * xfit + intercept, 'r--',
label=f'回帰直線 (r={r:.3f}, p={p:.3f})')
5. 図3:
デンドログラム
5. 分析3:Wardクラスタリング(デンドログラム)
前節の女性仕事時間とTFRの正の相関という結果を踏まえると、
都道府県ごとの「生活様式の違い」がTFRに影響していると考えられる。
これを検証する必要があるが、その手法としてWard法による階層クラスタリングに着目した。
時間使用パターンの似た都道府県同士がグループ化され、グループ間でTFRに差が出ることが期待される。
図3:女性の7種類の生活時間変数(標準化後)をもとにしたWard法による階層クラスタリングのデンドログラム。赤破線は4クラスター分割点。
📌 この散布図の読み方
- このグラフは
- 横軸(x)と縦軸(y)に2変数を取り、各都道府県(または自治体)を点で描いたグラフ。
- 読み方
- 点の並びに右上がりの傾向があれば正の相関、右下がりなら負の相関。点が直線に近いほど相関が強い。
- なぜそう解釈できるか
- 回帰直線(赤線など)の傾きが回帰係数に対応する。直線から大きく外れた点が外れ値で、特異な地域を示す。
4クラスターの地理的分布
| グループ | 都道府県数 | 主な都道府県 | 特徴(仕事時間平均) |
| グループ1 | 16 |
群馬・埼玉・千葉・神奈川・静岡・愛知・三重・滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・岡山・山口・香川・愛媛 |
都市圏・西日本主体(仕事↑・家事標準) |
| グループ2 | 11 |
北海道・宮城・秋田・山形・栃木・岐阜・和歌山・高知・福岡・長崎・熊本 |
地方都市・農村混在型(バランス型) |
| グループ3 | 19 |
青森・岩手・福島・茨城・東京・新潟・富山・石川・福井・山梨・長野・鳥取・島根・広島・徳島・佐賀・大分・宮崎・鹿児島 |
日本海側・地方中核(仕事時間長め) |
| グループ4 | 1 |
沖縄県 |
全国と大きく異なる生活時間パターン |
東京都がグループ3(地方型)に分類された理由
東京都の女性仕事時間は全国最高水準ですが、家事・育児時間が少なく、休養・くつろぎ時間が長い特徴があります。
これが「日本海側の勤勉型」地域と類似した多変量プロファイルを持つため、同グループに分類されました。
クラスタリングは1変数ではなく7変数のパターン全体の類似性で分類することに注意してください。
DATA SCIENCE POINT 3
Ward法と階層クラスタリングの仕組み
Ward法は「クラスター内の分散(ばらつき)の増加量」が最小になるよう結合するアルゴリズムです。
類似した地域が最初に結合され、デンドログラムの縦軸(Ward距離)の大きな「ジャンプ」が
クラスター数の決定に使われます。
from sklearn.preprocessing import StandardScaler
from scipy.cluster.hierarchy import dendrogram, linkage, fcluster
# 7変数で標準化(平均0・分散1に変換)
cluster_vars = ['仕事', '家事', '育児', '睡眠', '介護・看護', '買い物', '休養・くつろぎ']
X_scaled = StandardScaler().fit_transform(df[cluster_vars])
# Ward法で階層クラスタリング
Z = linkage(X_scaled, method='ward')
# デンドログラム描画
dendrogram(Z, labels=df['都道府県'].tolist(),
color_threshold=Z[-(4-1), 2]) # 4クラスター分割
# クラスターラベルを割り当て
df['cluster'] = fcluster(Z, 4, criterion='maxclust')
6. 図4:
箱ひげ図
6. 分析4:クラスター別TFR箱ひげ図
図4:4クラスターグループ別の合計特殊出生率(TFR)の分布。箱は四分位範囲(IQR)、中央線は中央値、ひげはIQR×1.5の範囲。右上はKruskal-Wallis検定結果。
📌 この箱ひげ図の読み方
- このグラフは
- データの分布(中央値・四分位範囲・外れ値)を箱と線で表したグラフ。
- 読み方
- 箱の中の線が中央値。箱の上下端が25%・75%点。箱の外の点が外れ値。
- なぜそう解釈できるか
- グループ間で箱が重なっていなければ有意差の証拠になりやすい。
グループ別TFR統計量(実データ)
| グループ | N | 平均TFR | 標準偏差 | 最小 | 最大 |
| グループ1(都市圏・西日本) | 16 | 1.313 | 0.106 | 1.08 | 1.50 |
| グループ2(地方都市・農村混在) | 11 | 1.316 | 0.151 | 1.03 | 1.57 |
| グループ3(日本海側・地方中核) | 19 | 1.403 | 0.153 | 1.04 | 1.61 |
| グループ4(沖縄県) | 1 | 1.700 | — | 1.70 | 1.70 |
Kruskal-Wallis検定の結果
グループ間のTFR差をKruskal-Wallis検定(ノンパラメトリック一元配置)で検定した結果、
グループ間に統計的な差が認められ(p = 0.020)、女性の生活時間パターンのクラスターが
TFRの違いと関連することが示されました。
グループ3(日本海側・地方中核)のTFRがグループ1・2より高い傾向が見られます。
箱ひげ図の読み方
箱の下辺:第1四分位数(Q1)/ 中央線:中央値(Q2)/ 箱の上辺:第3四分位数(Q3)
ひげ:Q1−1.5×IQR〜Q3+1.5×IQR の範囲。この範囲外の点が外れ値。
N=47という小サンプルでは、外れ値(沖縄県等)の影響に注意が必要です。
7.
重回帰
7. 重回帰分析:TFRの規定要因
TFR_i = β₀ + β₁ × 女性仕事時間_i + β₂ × 保育所密度_i + β₃ × 消費支出_i + ε_i
保育所密度 = 保育所等数 ÷ 総人口(女) × 100,000(10万人あたり保育所数)
消費支出 = 二人以上世帯の月間消費支出(万円)
推定結果(N=47)
| 変数 | 係数 | p値 | 有意性 | 解釈 |
| 切片 | +1.393 | 0.001 | *** | — |
| 女性仕事時間(分/日) | −0.00254 | 0.196 | n.s. | 仕事時間単独の効果は非有意(他変数で調整後) |
| 保育所密度(10万人あたり) | +0.00832 | <0.001 | *** | 保育環境の充実が最も強くTFRに正の効果 |
| 消費支出(万円) | −0.00295 | 0.777 | n.s. | 消費水準の単純効果は非有意 |
決定係数 R²
0.415
3変数でTFRの分散を41.5%説明
F統計量
10.17
p < 0.0001(モデル全体有意)
保育所密度が最も重要な規定要因
重回帰分析で女性仕事時間・保育所密度・消費支出を同時に投入すると、
保育所密度だけが統計的に有意(p<0.001)でした。
これは「仕事と子育ての両立を支える保育インフラの整備」が、
個々の女性の仕事時間よりもTFRに強い正の影響を与えることを示しています。
相関分析と重回帰分析の結果の違いに注目
相関分析では「女性仕事時間とTFR」の間にr=+0.326(有意)の正の相関が見られましたが、
重回帰で保育所密度を統制すると女性仕事時間の係数は非有意になります。
これは「保育所密度」が「女性仕事時間」と「TFR」の両方に影響する交絡変数として機能していることを示します。
相関 ≠ 因果であり、多変量分析による交絡変数の統制が重要です。
DATA SCIENCE POINT 4
重回帰分析の実装(statsmodels)
Pythonのstatsmodelsを使うと、詳細な統計検定結果(p値・信頼区間・F検定)を得られます。
係数の有意性だけでなく、R²やDurbin-Watson統計量も確認しましょう。
import statsmodels.api as sm
# 説明変数と目的変数
X_cols = ['仕事', '保育所密度', '消費支出_万円']
X = sm.add_constant(df[X_cols]) # 切片列を追加
y = df['合計特殊出生率']
# OLS回帰の推定
model = sm.OLS(y, X).fit()
print(model.summary())
# 主要指標
print(f"R² = {model.rsquared:.4f}")
print(f"調整済R² = {model.rsquared_adj:.4f}")
print(f"F統計量 = {model.fvalue:.3f}, p = {model.f_pvalue:.4f}")
# 係数とp値
for name, coef, pval in zip(model.params.index, model.params, model.pvalues):
sig = '***' if pval < 0.001 else '**' if pval < 0.01 else '*' if pval < 0.05 else 'n.s.'
print(f" {name}: β={coef:+.6f}, p={pval:.4f} {sig}")
8. 教育的ポイント:この論文から学べる統計手法
使用した手法のまとめ
01
時間使用調査(SSDSE-D)
社会生活基本調査のデータを都道府県・男女別に集計した実データ。分/日単位の詳細な時間配分から、生活様式の地域差を分析する手法。
02
Pearson相関分析
連続変数間の線形関係をr(−1〜+1)で定量化。ヒートマップによる多変数の一括可視化で、変数選択の手がかりを得る。
03
重回帰分析(OLS)
複数の説明変数を同時投入することで、交絡変数を統制しながら各変数の純粋な効果を推定。R²・F検定・t検定の三段階評価が重要。
04
Wardクラスタリング
7変数の標準化後にWard法で階層クラスタリング。デンドログラムでクラスター構造を可視化し、都道府県の生活時間パターンを類型化する。
高校生が習得すべきデータサイエンスの思考法
- 1変数ずつ見る(相関) → 多変数を同時に見る(重回帰) → パターンでグループ化する(クラスタリング)という3段階の分析は、どんなテーマにも応用できる基本フレームワークです
- 交絡変数の存在を常に意識する。「AとBが相関している」は「AがBを引き起こす」を意味しません
- 実際の政策データ(SSDSE)を使うことで、統計手法が社会課題の解決に直結することを体感できます
📝 コード
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161 | import os
import warnings
import numpy as np
import pandas as pd
import matplotlib
matplotlib.use('Agg')
import matplotlib.pyplot as plt
import matplotlib.font_manager as fm
from scipy import stats
from scipy.cluster.hierarchy import dendrogram, linkage, fcluster
from scipy.spatial.distance import pdist
from sklearn.preprocessing import StandardScaler
import statsmodels.api as sm
warnings.filterwarnings('ignore')
|
▼ 実行結果
このステップは print はしません。データや図が裏で更新されただけ。次のステップへ進みましょう。
💡 解説
import pandas as pd など — 必要なライブラリをまとめて呼び出します。as pd は短い別名(alias)。matplotlib.use('Agg') — グラフを画面表示せずファイルに保存するためのおまじない。StandardScaler().fit_transform(X) — 各列を「平均0・分散1」に標準化。単位が違う変数のβを比較可能に。
💡 Python TIPS f"...{x}..." はf-string。文字列の中に {変数} と書くだけで埋め込めて、{x:.2f} のように書式も指定できます。
📝 コード
| # ── パス設定 ────────────────────────────────────────────────────
_dir = os.path.dirname(os.path.abspath(__file__))
DATA_D = os.path.join(_dir, '..', 'data', 'raw', 'SSDSE-D-2023.csv')
DATA_B = os.path.join(_dir, '..', 'data', 'raw', 'SSDSE-B-2026.csv')
FIG_DIR = os.path.join(_dir, '..', 'html', 'figures')
os.makedirs(FIG_DIR, exist_ok=True)
|
▼ 実行結果
このステップは print はしません。データや図が裏で更新されただけ。次のステップへ進みましょう。
💡 解説
os.makedirs('html/figures', exist_ok=True) — 図の保存先フォルダを作る(既にあってもOK)。
💡 Python TIPS df['A'] / df['B'] — pandasの列同士の四則演算は要素ごと(element-wise)。forループ不要なのが強み。
📝 コード
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174 | # ── フォント設定 ─────────────────────────────────────────────────
for fname in ['Hiragino Sans', 'Hiragino Kaku Gothic ProN', 'Yu Gothic',
'MS Gothic', 'Noto Sans CJK JP']:
if fname in [f.name for f in fm.fontManager.ttflist]:
plt.rcParams['font.family'] = fname
break
plt.rcParams['axes.unicode_minus'] = False
|
▼ 実行結果
このステップは print はしません。データや図が裏で更新されただけ。次のステップへ進みましょう。
💡 解説
plt.rcParams['font.family'] — グラフの日本語表示用フォント指定(Macは Hiragino Sans、Windowsなら Yu Gothic 等)。
💡 Python TIPS Seriesの .map() は「1対1の置き換え」、.apply() は「関数を当てる」。辞書なら .map()、ロジックなら .apply()。
📝 コード
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188 | # ── 色パレット ────────────────────────────────────────────────────
C1, C2, C3, C4 = '#1565C0', '#E65100', '#2E7D32', '#6A1B9A'
CLUSTER_COLORS = ['#1565C0', '#E65100', '#2E7D32', '#6A1B9A']
df_d = pd.read_csv(DATA_D, encoding='cp932', header=1)
df_d_f = df_d[(df_d['男女の別'] == '2_女') & (df_d['地域コード'] != 'R00000')].copy()
# 時間使用列(分/日)
TIME_COLS = ['仕事', '家事', '育児', '睡眠', '介護・看護', '買い物', '休養・くつろぎ']
for c in TIME_COLS:
df_d_f[c] = pd.to_numeric(df_d_f[c], errors='coerce')
print(f"SSDSE-D 女性データ: {len(df_d_f)} 都道府県")
print("時間使用列(分/日)先頭5行:")
print(df_d_f[['都道府県'] + TIME_COLS].head())
|
▼ 実行結果
このステップは print はしません。データや図が裏で更新されただけ。次のステップへ進みましょう。
💡 解説
pd.read_csv(...) でCSVを読み込みます。encoding='cp932' は日本語Windows由来の文字コード、header=1 は「2行目を列名として使う」。
💡 Python TIPS [式 for x in リスト] はリスト内包表記。forループでappendする代わりに1行でリストを作れます。
📝 コード
| # ── SSDSE-B(社会・人口統計体系 2022年度)────────────────────────
df_b = pd.read_csv(DATA_B, encoding='cp932', header=1)
df_b = df_b[
(df_b['地域コード'].str.match(r'^R\d{5}$', na=False)) &
(df_b['年度'] == 2022)
].copy()
|
▼ 実行結果
このステップは print はしません。データや図が裏で更新されただけ。次のステップへ進みましょう。
💡 解説
pd.read_csv(...) でCSVを読み込みます。encoding='cp932' は日本語Windows由来の文字コード、header=1 は「2行目を列名として使う」。df['地域コード'].str.match(r'^R\d{5}', ...) — 正規表現で「R+数字5桁」の行(47都道府県)だけTrueにし、真偽値で行をフィルタ。
💡 Python TIPS r, p = stats.pearsonr(...) — Pythonは複数戻り値を同時に受け取れる(タプルアンパック)。
📝 コード
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201 | # 必要列を数値化
NUM_COLS_B = ['合計特殊出生率', '15~64歳人口(女)', '総人口(女)',
'保育所等数', '消費支出(二人以上の世帯)']
for c in NUM_COLS_B:
df_b[c] = pd.to_numeric(df_b[c], errors='coerce')
print(f"\nSSDSE-B 2022年度: {len(df_b)} 都道府県")
|
▼ 実行結果
このステップは print はしません。データや図が裏で更新されただけ。次のステップへ進みましょう。
💡 解説
- このステップでは前のステップで作ったデータを加工しています。コードを上から順に読んでみてください。
💡 Python TIPS x if cond else y は三項演算子。リスト内包表記と組み合わせると、forとifを1行で書けます。
📝 コード
| # ── 派生変数の計算 ───────────────────────────────────────────────
# 15-64歳女性比率(労働年齢女性比率)%
df_b['女性労働年齢比率'] = df_b['15~64歳人口(女)'] / df_b['総人口(女)'] * 100
# 保育所密度(人口10万人あたり保育所数)
df_b['保育所密度'] = df_b['保育所等数'] / df_b['総人口(女)'] * 100000
|
▼ 実行結果
このステップは print はしません。データや図が裏で更新されただけ。次のステップへ進みましょう。
💡 解説
- このステップでは前のステップで作ったデータを加工しています。コードを上から順に読んでみてください。
💡 Python TIPS df[col](1列)と df[[col1, col2]](複数列)でカッコの数が違います。リストを渡していると覚えるとミスを減らせます。
📝 コード
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217 | # 消費支出(万円)
df_b['消費支出_万円'] = df_b['消費支出(二人以上の世帯)'] / 10000
# ── データ結合 ───────────────────────────────────────────────────
D_USE = ['地域コード', '都道府県'] + TIME_COLS
B_USE = ['地域コード', '合計特殊出生率', '女性労働年齢比率', '保育所密度', '消費支出_万円']
df = pd.merge(df_d_f[D_USE], df_b[B_USE], on='地域コード').dropna()
print(f"\n結合後データ: {len(df)} 都道府県(欠損除外後)")
print(df[['都道府県', '仕事', '家事', '育児', '合計特殊出生率', '保育所密度']].head())
|
▼ 実行結果
💡 解説
- このステップでは前のステップで作ったデータを加工しています。コードを上から順に読んでみてください。
💡 Python TIPS s[:-n]「末尾n文字を除く」/s[n:]「先頭n文字を除く」。スライス [start:stop:step] はリスト・タプル・文字列共通の基本ワザです。
📝 コード
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231 | CORR_COLS = ['仕事', '家事', '育児', '睡眠', '介護・看護', '買い物',
'合計特殊出生率', '保育所密度', '消費支出_万円']
CORR_LABELS = ['仕事時間', '家事時間', '育児時間', '睡眠時間', '介護時間', '買物時間',
'合計特殊出生率', '保育所密度', '消費支出']
corr_df = df[CORR_COLS].corr()
# ── 2-2. 重回帰: TFR ~ 仕事時間 + 保育所密度 + 消費支出 ──────
X_cols = ['仕事', '保育所密度', '消費支出_万円']
X_data = sm.add_constant(df[X_cols])
y_data = df['合計特殊出生率']
reg_model = sm.OLS(y_data, X_data).fit()
print("\n重回帰分析結果:")
print(reg_model.summary())
|
▼ 実行結果
このステップは print はしません。データや図が裏で更新されただけ。次のステップへ進みましょう。
💡 解説
sm.add_constant(X) — 切片項(定数1の列)を先頭に追加。statsmodelsで必須。sm.OLS(y, X).fit() — 最小二乗法でモデルを推定。model.params, model.pvalues, model.conf_int() で結果取得。
💡 Python TIPS df['A'] / df['B'] — pandasの列同士の四則演算は要素ごと(element-wise)。forループ不要なのが強み。
📝 コード
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248 | # ── 2-3. クラスター分析(Ward法)─────────────────────────────
cluster_vars = ['仕事', '家事', '育児', '睡眠', '介護・看護', '買い物', '休養・くつろぎ']
scaler = StandardScaler()
X_scaled = scaler.fit_transform(df[cluster_vars])
Z = linkage(X_scaled, method='ward')
# 4クラスター
n_clusters = 4
df['cluster'] = fcluster(Z, n_clusters, criterion='maxclust')
print("\nクラスター割り当て(グループ別都道府県数):")
for g in sorted(df['cluster'].unique()):
prefs = df[df['cluster'] == g]['都道府県'].tolist()
print(f" グループ {g} ({len(prefs)}都道府県): {', '.join(prefs)}")
print("\nグループ別 合計特殊出生率:")
print(df.groupby('cluster')['合計特殊出生率'].agg(['mean', 'std', 'count']).round(3))
|
▼ 実行結果
💡 解説
df.groupby('列').apply(関数) — グループごとに関数を適用。時系列や地域別の集計でよく使います。StandardScaler().fit_transform(X) — 各列を「平均0・分散1」に標準化。単位が違う変数のβを比較可能に。
💡 Python TIPS Seriesの .map() は「1対1の置き換え」、.apply() は「関数を当てる」。辞書なら .map()、ロジックなら .apply()。
📝 コード
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268 | print("\n" + "="*60)
print("重回帰分析サマリー(TFR ~ 女性仕事時間 + 保育所密度 + 消費支出)")
print("="*60)
print(f" R² = {reg_model.rsquared:.4f}")
print(f" 調整済R² = {reg_model.rsquared_adj:.4f}")
print(f" F統計量 = {reg_model.fvalue:.3f}, p = {reg_model.f_pvalue:.4f}")
print("\n 係数:")
for name, coef, pval in zip(reg_model.params.index, reg_model.params, reg_model.pvalues):
sig = '***' if pval < 0.001 else '**' if pval < 0.01 else '*' if pval < 0.05 else ''
print(f" {name:20s}: {coef:+.6f} p={pval:.4f} {sig}")
print("\n" + "="*60)
print("相関係数(女性仕事時間 vs 合計特殊出生率)")
print("="*60)
r_work_tfr, p_work_tfr = stats.pearsonr(df['仕事'], df['合計特殊出生率'])
print(f" r = {r_work_tfr:.4f}, p = {p_work_tfr:.4f}")
r_house_tfr, p_house_tfr = stats.pearsonr(df['家事'], df['合計特殊出生率'])
print(f"\n相関係数(家事時間 vs 合計特殊出生率)")
print(f" r = {r_house_tfr:.4f}, p = {p_house_tfr:.4f}")
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▼ 実行結果
============================================================
重回帰分析サマリー(TFR ~ 女性仕事時間 + 保育所密度 + 消費支出)
============================================================
# 実行時エラーで途中まで
💡 解説
stats.pearsonr(x, y) — Pearson相関係数 r と p値を同時に返します。
💡 Python TIPS [式 for x in リスト] はリスト内包表記。forループでappendする代わりに1行でリストを作れます。
9. まとめと政策含意
主要な発見
- 女性仕事時間とTFRは正の相関(r=+0.326):
都道府県レベルでは「女性が多く働く地域ほどTFRが高い」という関係が見られる。
「仕事 vs 子育て」の単純なトレードオフ論は、地域データでは支持されない。
- 保育所密度が最重要の規定要因:
重回帰分析では保育所密度のみが有意(β=+0.0083, p<0.001)。
保育インフラの整備が、就業と出生率の両立を可能にする「鍵」であることが示された。
- クラスター分析でTFRの地域差を可視化:
Wardクラスタリングで4グループに分類すると、グループ間でTFRの分布に差が見られ、
女性の生活時間パターンの類型が出生率パターンと関連することが確認された(Kruskal-Wallis p=0.020)。
- 沖縄県の特異性:
TFR=1.70(全国最高)を示す沖縄県は、独自の生活時間パターンを持ち、
保育環境・文化的要因の複合的影響が示唆される。
政策への示唆
女性の就業促進と少子化対策は「二者択一」ではなく「相乗効果」が期待できる。
保育所の量・質の拡充(保育所密度の向上)が最も効果的な少子化対策の一つであり、
女性が仕事と子育てを両立しやすい環境整備こそが、人口維持と経済活性化を同時に実現する鍵である。
本研究の限界と今後の課題
都道府県レベルの集計データを使用しているため、個人レベルの行動を直接分析していない。
また、時系列的な因果関係(保育所整備→就業増加→TFR向上の順序)は横断データからは確認できない。
パネルデータを用いた固定効果モデルや、個票データを用いたミクロ計量分析が今後の課題となる。
教育的価値(この分析から学べること)
- 女性の社会進出と生活形態:M字カーブの解消・育児負担の分担・住居形態などが絡む複雑な現象を、データで分解する考え方。
- 代理変数の組み合わせ:『社会進出』は1つの指標で測れない。就業率・管理職比率・賃金水準を組み合わせる必要がある。
- 地域比較の意味:都道府県差は文化・制度・産業構造の合成結果。原因を1つに絞れない多要因問題。
10. コードのダウンロード
以下のPythonスクリプトをダウンロードすることで、本ページの全図表を再現できます。
使用データ
| ファイル | 内容 | 出典 |
SSDSE-D-2023.csv | 社会生活基本調査 都道府県・男女別時間使用データ(2021年実施) | 統計数理研究所 SSDSE |
SSDSE-B-2026.csv | 社会・人口統計体系 都道府県別データ(2022年度利用) | 統計数理研究所 SSDSE |
実行方法
pip install pandas numpy scipy matplotlib scikit-learn statsmodels
# プロジェクトルートから実行
python3 code/2023_H1_daijin.py
# 出力:html/figures/2023_H1_fig{1-4}_*.png(4枚)
SSDSE(社会・人口統計体系データセット)について
統計数理研究所が整備・公開する都道府県・市区町村レベルの統計データセット。
A〜F の6種類があり、本分析ではB(社会・人口統計)とD(社会生活基本調査)を使用。
すべて無料でダウンロード可能。統計コンペの公式指定データセットとして広く活用されている。
(
https://www.ism.ac.jp/SSDSE/)
⚠️ よくある誤解と注意点
統計分析の解釈で初心者がやりがちな勘違いをまとめます。特に「相関と因果の混同」「p値の過信」は研究現場でもよく起きる落とし穴です。本文を読む前にも、読んだ後にも、目を通してみてください。
❌ 「相関がある=因果関係がある」ではない
疑似相関(spurious correlation)とは、見かけ上は関係があるように見えるが、実際は無関係、または第三の変数(交絡変数)が両方に影響しているだけの現象です。
古典例: アイスクリームの売上 と 水難事故件数 は強く相関するが、片方が他方を引き起こしているわけではない。両者とも「夏の暑さ」という第三の変数に引きずられているだけ。
論文を読むときの心構え: 「○○と△△に強い相関が見られた」だけで終わっている主張は、本当に因果関係があるのか、それとも第三の変数(人口・所得・地理など)が共通要因として効いているだけではないかを必ず疑ってください。
❌ 「p値が小さい=重要な発見」ではない
p値が小さい(例えば p < 0.001)ことは「統計的に偶然とは考えにくい」という意味であって、「実用的に大きな効果がある」という意味ではありません。
例: 巨大なサンプルサイズ(n=100,000)では、相関係数 r=0.02 でも p < 0.001 になります。しかし r=0.02 は実用上ほぼ無視できる関係です。
正しい読み方: p値と効果量(係数の大きさ、相関係数の値)の両方をセットで判断してください。p値だけで「重要な発見」と結論づけるのは誤りです。
❌ 「回帰係数が大きい=重要な変数」ではない
回帰係数の絶対値は、説明変数の単位に強く依存します。「年収(万円)」と「失業率(%)」の係数を直接比較しても意味がありません。
正しい比較方法: (1) 標準化係数(各変数を平均0・分散1に変換した上での係数)を使う、(2) 限界効果(変数を1標準偏差動かしたときのyの変化)で比較する。
また、係数の大きさが「因果関係の強さ」を意味するわけでもありません。あくまで「相関的な関連の強さ」です。
❌ 「外れ値を除外すれば正しい結果」ではない
外れ値(極端な値)を「目障りだから」「結果が綺麗にならないから」という理由で除外するのは分析の改ざんに近い行為です。
外れ値が示すもの: 本当に重要な情報(東京の超高密度、北海道の超低密度など)であることが多い。外れ値を取り除くと「日本全体の傾向」を見誤る原因になります。
正しい対処: (1) 外れ値の出現要因を調査する(なぜ東京だけ突出するのか)、(2) ノンパラメトリック手法(Spearman相関・Kruskal-Wallis)を使う、(3) 外れ値を含む結果と除外した結果の両方を提示し、解釈を読者に委ねる。
❌ 「サンプルサイズが大きい=信頼できる」ではない
サンプルサイズ(n)が大きいと統計的検定の検出力は上がりますが、それは「偶然による誤差を減らす効果」にすぎません。
nが大きくても解消されない問題:
・選択バイアス(標本が偏っている)
・測定誤差(変数の定義が曖昧)
・欠損値のパターン(欠損がランダムでない)
・交絡変数の見落とし
例: 1万人にWeb調査して「ネット利用と幸福度は強く相関」と言っても、そもそも回答者がネットユーザー寄りに偏っているため、母集団全体の結論にはなりません。
❌ 「複雑なモデル=より良い分析」ではない
ランダムフォレスト・ニューラルネット・複雑な階層モデルなど、高度な手法を使えば「良い分析」と感じがちですが、必ずしもそうではありません。
過学習(overfitting)の罠: モデルが複雑すぎると、訓練データの偶然のパターンまで学習してしまい、新しいデータでは予測精度が落ちます。
シンプルさの価値: 重回帰分析や相関分析は「結果が解釈しやすい」「再現性が高い」という大きな利点があります。複雑な手法はシンプルな手法で答えが出ない時の最後の手段です。
❌ 「多重共線性は気にしなくていい」ではない
多重共線性とは、説明変数同士の相関が極めて強い状態のこと。これを放置すると、回帰係数の符号や大きさが入れ替わる異常事態が起こります。
典型例: 「総人口」と「労働力人口」を同時に投入すると、両者の相関が r=0.99 になり、係数推定が極端に不安定になります。「総人口は正だが、労働力人口は負」のような解釈不能な結果になりがちです。
診断と対処:
・VIF(分散拡大係数)を計算し、VIF > 10 の変数を確認
・相関行列で |r| > 0.8 のペアをチェック
・対処法:一方を除外、合成変数(PCA)に変換、Ridge回帰で安定化
❌ 「R²が高い=良いモデル」ではない
決定係数 R² はモデルの「当てはまりの良さ」を示しますが、R² が高くてもモデルが正しいとは限りません。
R² が高くなる罠:
・説明変数を増やせば R² は自動的に上がる(無関係な変数を追加してもR²は下がらない)
・時系列データでは、共通のトレンド(時間とともに増加)があるだけで R² が 0.9 を超える
・サンプルサイズが小さいとR²が過大評価される
代替指標: 調整済み R²(変数の数でペナルティ)、AIC・BIC(モデル選択基準)を併用してください。予測力の真の評価には交差検証(cross-validation)でテストデータの R² を見ること。
❌ 「ステップワイズで選んだ変数は重要」ではない
ステップワイズ法(バックワード・フォワード選択)は便利ですが、p値ベースの変数選択は再現性に問題があると批判されています。
問題点:
・同じデータでも実行順序によって最終モデルが変わる
・p値を繰り返し見ることで「偶然に有意な変数」を拾ってしまう(p-hacking)
・係数の標準誤差が過小評価され、信頼区間が嘘っぽくなる
より良い方法:
・事前に変数を理論で絞る(先行研究から候補を選ぶ)
・LASSO回帰(自動かつ統計的に正当化された変数選択)を使う
・交差検証で AIC/BIC 最小モデルを選ぶ
❌ 「線形回帰なら線形関係を前提にすべき」
重回帰分析は線形関係を前提とします。実際の関係が非線形なのに線形モデルで分析すると、本当の関係を見逃します。
非線形の例:
・U字型関係: 失業率と物価上昇率(フィリップス曲線)
・逓減効果: 所得と幸福度(年収 800万円までは強い正の効果、それ以上は飽和)
・閾値効果: 高齢化率と医療費(ある水準を超えると急激に上がる)
診断と対処:
・残差プロットで残差が0周辺に均等に分布しているか確認
・変数の対数変換・二乗項追加で非線形性を取り込む
・どうしても線形では捉えられないなら、機械学習(RF・GBM)を併用する
❌ 「データに当てはまった=予測に使える」ではない
「過去のデータでフィットしたから将来も予測できる」と思うのは危険です。
過学習(overfitting)の例: 47都道府県のデータに10個の説明変数を投入すれば、ほぼ完璧にフィットします(自由度がほぼゼロ)。でもそのモデルを新しい年度に適用すると、予測精度はほぼランダム並みに落ちることがあります。
正しい予測力の評価:
・データを訓練用 70%とテスト用 30%に分割し、テスト用での予測精度を見る
・k分割交差検証(k-fold CV)で予測の安定性を確認
・「説明変数の数 ≪ サンプルサイズ」のバランスを意識(目安:n > 10 × 変数数)
📖 用語集(この記事に出てくる統計用語)
統計の基本用語を初心者向けに解説します。本文中で見慣れない言葉が出てきたら、ここに戻って確認してください。
- p値
- 「効果がない」と仮定したときに、観察されたデータ(またはより極端なデータ)が得られる確率。0〜1の値で、慣例的に 0.05(5%)未満を「有意」と判断する。
- 有意水準
- 「偶然」と「意味のある違い」を分ける基準。通常 α=0.05(5%)を使う。p値 < α なら「有意」と判定。
- 信頼区間
- 「真の値はこの範囲にあるだろう」という幅。95%信頼区間 = 同じ実験を100回繰り返したら95回はこの範囲に真の値が入る。
- サンプルサイズ
- 分析に使ったデータ点の数(n)。一般にnが大きいほど推定が安定し、わずかな差も検出できるようになる。
- 標準誤差
- 推定値(係数など)のばらつきの目安。標準誤差が小さいほど推定値が安定している。
- 正規分布
- 釣鐘型の左右対称な分布。多くのパラメトリック検定(t検定・F検定など)は「データが正規分布に従う」ことを仮定する。
- 因果と相関
- 「相関がある」と「原因と結果の関係(因果)」は別物。アイスクリームの売上と水難事故は相関するが、原因は両者とも「夏の暑さ」。
- 外れ値
- 他のデータから極端に離れた値。分析結果を歪める原因になるため、検出して除外するか別途扱う必要がある。
- 欠損値
- データが取得できなかった部分(NaN・空白)。除外するか補完(平均代入・回帰代入など)するかが分析上の重要な判断点。
- VIF
- Variance Inflation Factor(分散拡大係数)。多重共線性の強さを示す指標。VIF > 10 で「強い多重共線性あり」と判断。
- ノンパラメトリック
- データが正規分布などの特定の分布に従うことを仮定しない手法。順位やランクを使って検定する。外れ値や歪んだ分布に頑健。
- 交絡変数
- 「真の原因」と「結果」の両方に影響する第三の変数。これを統制しないと、見かけ上の関係を真の因果と誤認する。
- 係数(回帰係数)
- 「説明変数 x が1単位増えたとき、目的変数 y が平均でどれだけ変化するか」を示す数値。正の値は正の影響、負の値は負の影響。
- 内生性
- 説明変数と誤差項が相関している状態。逆因果や交絡変数の存在で発生する。これを放置すると係数推定にバイアスが生じる。
- 多重共線性
- 説明変数同士の相関が強すぎる状態。係数推定が不安定になり、解釈を誤る原因になる。VIF > 10 が警告サイン。
- 標準化係数
- 変数の単位の影響を取り除いた係数。複数の変数の影響の大きさを単位に依存せず比較するために使う。
- 決定係数 R²
- 回帰モデルが目的変数のばらつきの何%を説明できるかを示す指標。0〜1の値で、1に近いほどモデルの説明力が高い。
📐 使っている手法をわかりやすく解説
統計手法について「何のためか」「結果をどう読むか」を初心者向けに解説します。
◆ 統計の基本概念(どの論文にも共通)
🔍 p値(有意確率)とは
- 何?
- 「もし本当に効果がなかったとしたら、今回の結果(またはもっと極端な結果)が偶然起きる確率」のこと。
- なぜ必要?
- 帰無仮説(「効果なし」の仮定)のもとで検定統計量の分布から計算する。
- 何がわかる?
- 「この関係は偶然ではなく、統計的に意味がある」と主張するための客観的な根拠になる。
- 読み方
- p < 0.05(5%未満)を「統計的に有意」と判断するのが慣例。ただし「p値が小さい=効果が大きい」ではない。効果量(係数の大きさ)とセットで判断する。
🗂️ ノンパラメトリック検定とは(なぜ使うのか)
- 何?
- 「データが正規分布に従う」という仮定を置かない検定手法の総称。Kruskal-Wallis検定・Mann-Whitney U検定などが代表例。
- なぜ必要?
- データの値ではなく「順位」に変換して検定統計量を計算する。外れ値や偏った分布に対しても安定して機能する。
- 何がわかる?
- サンプルサイズが小さい・データが歪んでいる・外れ値がある場合でも、グループ差の有無を検定できる。
- 読み方
- 「なぜノンパラメトリックを選ぶのか」の理由を示すには、正規性検定(Shapiro-Wilk)の結果を添えるのが望ましい。結果の解釈は対応するパラメトリック検定と同様(p < 0.05 で有意差あり)。
◆ この論文で使われている手法
📈 重回帰分析
- 何?
- 複数の説明変数(原因候補)が1つの目的変数(結果)にどれだけ影響するかを同時に推定する手法。
- どう使う?
- 目的変数 y を複数の説明変数 x₁, x₂, … で予測する式(y = a₁x₁ + a₂x₂ + … + b)を最小二乗法でフィットさせる。
- 何がわかる?
- 複数の要因が混在するなかで「どれが一番効いているか」を一度に検証できる。交絡変数を統制できる。
- 結果の読み方
- 係数(a₁, a₂…)のプラスは正の影響、マイナスは負の影響。p < 0.05 で統計的に有意。R²が1に近いほどモデルの説明力が高い。
- ⚠️ 注意点
- (1) 多重共線性を必ずVIFで確認(VIF>10で警告)。(2) 線形性の仮定—関係が曲線なら対数変換や二乗項を追加。(3) 残差プロットで正規性・等分散性を確認。(4) サンプル数は最低でも「説明変数数×10」が目安。(5) 外れ値1つで係数が大きく変わるのでCook距離で確認。
🔗 相関分析
- 何?
- 2つの変数の「一緒に増減する傾向の強さと向き」を −1〜+1 の相関係数 r で数値化する手法。
- どう使う?
- 散布図を描き、Pearson(連続データ)または Spearman(順序データ・外れ値に強い)の相関係数を計算する。
- 何がわかる?
- 「気温が高い県ほど熱中症指標が高い」などの傾向を素早く確認できる。変数選択の第一歩として使われることも多い。
- 結果の読み方
- r > +0.7 は強い正の相関、r < −0.7 は強い負の相関、|r| < 0.3 はほぼ無相関。相関は因果関係を示すものではない点に注意。
- ⚠️ 注意点
- (1) 多重共線性を必ずVIFで確認(VIF>10で警告)。(2) 線形性の仮定—関係が曲線なら対数変換や二乗項を追加。(3) 残差プロットで正規性・等分散性を確認。(4) サンプル数は最低でも「説明変数数×10」が目安。(5) 外れ値1つで係数が大きく変わるのでCook距離で確認。
🏛️ パネルデータ固定効果モデル(FE)
- 何?
- 複数の個体(都道府県など)を複数時点で観測したパネルデータから、個体固有の見えない差を取り除いて時間変化の効果を推定する手法。
- どう使う?
- 各個体の平均を引く「within 変換」で、観察できない固有特性(北海道は寒いなど)を自動的に統制する。
- 何がわかる?
- 「東京だから人口が多い」ではなく「この政策が人口を増やした」という効果を分離して推定できる。
- 結果の読み方
- 係数の解釈は通常の回帰と同じ。Hausman 検定で固定効果モデルの妥当性を確認する。
- ⚠️ 注意点
- (1) 多重共線性を必ずVIFで確認(VIF>10で警告)。(2) 線形性の仮定—関係が曲線なら対数変換や二乗項を追加。(3) 残差プロットで正規性・等分散性を確認。(4) サンプル数は最低でも「説明変数数×10」が目安。(5) 外れ値1つで係数が大きく変わるのでCook距離で確認。
🌿 Ward法クラスタリング
- 何?
- データをグループ(クラスター)に自動分類する手法。グループ内のばらつきが最小になるよう統合していく。
- どう使う?
- 統合後の「ばらつき増加」が最小になるペアを繰り返し合体させ、デンドログラム(樹形図)で可視化する。
- 何がわかる?
- 都道府県を「都市型」「農村型」などのグループに自動分類し、グループ間の特徴比較ができる。
- 結果の読み方
- デンドログラムの切り位置でクラスター数を決める。各クラスターの変数平均を見てグループを命名・解釈する。
- ⚠️ 注意点
- (1) 多重共線性を必ずVIFで確認(VIF>10で警告)。(2) 線形性の仮定—関係が曲線なら対数変換や二乗項を追加。(3) 残差プロットで正規性・等分散性を確認。(4) サンプル数は最低でも「説明変数数×10」が目安。(5) 外れ値1つで係数が大きく変わるのでCook距離で確認。
📅 時系列分析
- 何?
- 時間順に並んだデータのトレンドや周期性、変化点を分析する手法群の総称。
- どう使う?
- 折れ線グラフでトレンドを視覚化し、移動平均・指数平滑・AR/MA モデルを適用する。
- 何がわかる?
- 「出生率がいつから下がり始めたか」「コロナ前後で変化したか」などの変化を客観的に捉えられる。
- 結果の読み方
- 傾きが正なら上昇トレンド、負なら下降トレンド。変化点の前後で傾きが変わる場合は構造変化として解釈する。
- ⚠️ 注意点
- (1) 多重共線性を必ずVIFで確認(VIF>10で警告)。(2) 線形性の仮定—関係が曲線なら対数変換や二乗項を追加。(3) 残差プロットで正規性・等分散性を確認。(4) サンプル数は最低でも「説明変数数×10」が目安。(5) 外れ値1つで係数が大きく変わるのでCook距離で確認。
🔬 Kruskal-Wallis検定
- 何?
- 3グループ以上の間に統計的な差があるかを検定するノンパラメトリック手法(正規分布を前提としない)。
- どう使う?
- 全データを合体して順位をつけ、グループ間の順位平均値の差をH統計量で検定する。
- 何がわかる?
- 「医師数の少・中・多の県で死亡率に差があるか」を分布の形に関わらず検定できる。
- 結果の読み方
- p < 0.05 でグループ間に有意差あり。どのグループ間に差があるかは Dunn 検定などで追加確認する。
- ⚠️ 注意点
- (1) 多重共線性を必ずVIFで確認(VIF>10で警告)。(2) 線形性の仮定—関係が曲線なら対数変換や二乗項を追加。(3) 残差プロットで正規性・等分散性を確認。(4) サンプル数は最低でも「説明変数数×10」が目安。(5) 外れ値1つで係数が大きく変わるのでCook距離で確認。
↔️ VAR(ベクトル自己回帰)/ Granger因果検定
- 何?
- 複数の時系列変数が互いに影響し合う関係を分析する手法(VAR)と、「AがBの予測に役立つか」を検定する手法(Granger因果)。
- どう使う?
- VARは全変数を互いに説明変数として同時回帰。Granger因果はF検定でAのラグ変数がBの予測精度を向上させるかを確認する。
- 何がわかる?
- 「女性就業率と出生率はどちらが先に動くか」「リード・ラグ関係」を特定できる。
- 結果の読み方
- Granger因果 p < 0.05 → 「Aの過去値はBの予測に役立つ」(ただし真の因果とは限らない)。
- ⚠️ 注意点
- (1) 多重共線性を必ずVIFで確認(VIF>10で警告)。(2) 線形性の仮定—関係が曲線なら対数変換や二乗項を追加。(3) 残差プロットで正規性・等分散性を確認。(4) サンプル数は最低でも「説明変数数×10」が目安。(5) 外れ値1つで係数が大きく変わるのでCook距離で確認。
🚀 発展の可能性(結果 X → 新仮説 Y → 課題 Z)
この研究をさらに発展させるための3つの方向性を示します。「今回わかったこと(X)」から「次に検証すべき仮説(Y)」を立て、「具体的に何をするか(Z)」まで考えてみましょう。
① データ・時間的拡張
- 結果 X
- 本論文は特定の年度・地域の断面データ(または限られた時系列)で分析を行った。
- 新仮説 Y
- より新しい年度のデータや市区町村レベルの細粒度データを使えば、知見の時間的頑健性や地域内格差を検証できる。
- 課題 Z
- (1)統計センターから最新の SSDSE をダウンロードし、同じ分析を再実行する。(2)結果が変わった場合、その要因(コロナ・政策変化など)を考察する。(3)市区町村データ(SSDSE-A/C/F)で分析単位を細かくした場合の結果と比較する。
② 手法の発展:重回帰分析 の次のステップ
- 結果 X
- 本論文は 重回帰分析 を用いた推定を行った。
- 新仮説 Y
- パネルデータ固定効果モデル(FE)による都道府県固有の差の統制 により、本分析では統制できていない問題を解消できる可能性がある。
- 課題 Z
- (1)パネルデータ固定効果モデル(FE)による都道府県固有の差の統制 を実装し、本論文の係数推定と比較する。(2)操作変数法(IV)による内生性の解消 も試し、結果の頑健性を確認する。(3)推定結果の変化から、元の分析の仮定のどれが重要だったかを考察する。
③ 政策提言・実践への応用
- 結果 X
- 本論文は分析結果から特定の変数が目的変数に影響することを示した。
- 新仮説 Y
- 分析対象を日本全国から特定地域に絞ること、または逆に国際比較に拡張することで、政策の移転可能性と文脈依存性を検証できる。
- 課題 Z
- (1)有意な変数を「政策で変えられるもの」と「変えにくいもの」に分類する。(2)政策で変えられる変数について、係数の大きさから「どれだけ変えればどれだけ効果があるか」を試算する。(3)自治体・政策立案者への提言として、実現可能なアクションプランを1枚にまとめる。
🎯 自分でやってみよう(5つのチャレンジ)
学んだだけでは身につきません。実際に手を動かすのが最強の学習方法です。本論文のスクリプトをベースに、以下のチャレンジに挑戦してみてください。難易度別に5つ用意しました。
★☆☆☆☆ 入門
CH1. 同じデータで分析を再現する
まずは付属の Python スクリプトをそのまま実行し、論文と同じ図を再現してみてください。
ポイント: 各図がどのコード行から生成されているか辿る。エラーが出たら原因を考える。
★★☆☆☆ 初級
CH2. 説明変数を1つ追加・除外して結果を比較
本論文の分析モデルから説明変数を1つ抜いて再実行、あるいは1つ追加して再実行してください。
ポイント: 係数・p値・R² がどう変わったか観察する。多重共線性が原因で結果が変わる例を見つけられたら理想的。
★★★☆☆ 中級
CH3. 別の年度・別の都道府県で同じ分析を試す
SSDSE の別の年度(例:2015年度・2020年度)または特定都道府県のみのデータで同じ分析を実行してください。
ポイント: 時代や地域によって結論が変わるか? 変わるならその理由を考察する。
★★★★☆ 上級
CH4. 別の手法を組み合わせる
本論文の手法 + 1つの追加手法(例:重回帰 + LASSO、相関分析 + 主成分分析)で結果を比較してください。
ポイント: 手法の違いで結論が変わるか? どちらが妥当かを「なぜ」とともに説明できるように。
★★★★★ 発展
CH5. オリジナルの問いを立てて分析する
本論文の手法を借りて、あなた自身の問いを立てて分析してください。
例:「カフェの数と幸福度に関連はあるか」「教育費の高い県は出生率も高いか」など。
ポイント: 問い・データ・手法・結論を1ページのレポートにまとめる。これがデータサイエンスの「実践」。
💡 ヒント: 詰まったら本サイトの他の論文(同じ手法を使っている)のスクリプトをコピーして組み合わせるのが効率的です。手法ガイド・用語集も参考に。
💼 この手法は実社会でこう使われている
本論文で学んだ手法は、研究の世界だけでなく、行政・企業・NPO の現場でも様々に活用されています。具体的なシーンを紹介します。
🏛️
行政の政策立案
都道府県・市区町村の政策担当者は、本論文と同様のデータ分析を用いて「どこに予算を投じれば効果が出るか」を検討します。
例えば医療費削減策、移住促進策、子育て支援策などの効果予測・効果検証に直結します。
🏢
企業のマーケティング・出店戦略
小売チェーン・サービス業の出店戦略では、地域特性(人口構成、所得、ライフスタイル)と売上の関係を本論文と同じ手法で分析します。
ECサイトでも顧客セグメント分析・購買要因分析に類似手法が使われます。
🏥
医療・公衆衛生
感染症の流行予測、医療資源配分の最適化、健康格差の地域要因分析などで、本論文の統計手法は標準的に使われています。
WHO・厚労省レベルの政策評価でも同じ手法が活躍しています。
📊
メディア・ジャーナリズム
新聞・テレビの社会調査記事、選挙予測、世論調査の分析でも、本論文と同じ手法(回帰分析・クラスタリングなど)が使われています。
データジャーナリズムの記事はこの種の分析が中核です。
🎓
学術研究(隣接分野)
経済学・社会学・公衆衛生学・教育学・地理学などの実証研究では、本論文と同じ手法が日常的に使われます。
専門誌に掲載される論文の8割以上が、こうした統計手法に基づいて結論を出しています。
💰
金融・保険業界
与信判断(融資審査)、保険料の地域別設定、不動産価格予測などで、本論文と同様のモデリング手法が広く活用されています。
統計分析の能力は金融業界の必須スキルになっています。
🤔 よくある質問(読者からの想定Q&A)
この論文を読んで初心者が抱きやすい疑問に、教育的観点から答えます。
Q1. この分析、自分でもできますか?
はい、できます。SSDSE データは無料で公開されており、Python の pandas, scikit-learn, statsmodels を使えば全く同じ手順で再現可能です。本ページ下部のスクリプトを実行するだけで結果が得られます。
Q2. 使われている手法は他の分野にも応用できますか?
十分応用可能です。本論文の[手法]は、医療・教育・経済・環境など他のドメインでも標準的に使われる手法です。データの中身(変数)を入れ替えるだけで、別の問いにも適用できます。
Q3. 結論は本当に「因果関係」を示していますか?
本論文は「観察データ」を使った分析であり、厳密な意味での「因果関係」を完全に証明したわけではありません。あくまで「強い関連が見られた」という事実を提示しているにとどまります。真の因果を示すには、無作為化比較試験(RCT)か、自然実験を活用したIV・DiD 等の手法が必要です。
Q4. データの最新版を使うとどうなりますか?
SSDSE は毎年更新されているため、最新版を使えば近年のトレンド(特にコロナ禍以降の変化)も含めて分析できます。ただし、結論が変わる可能性もあります。それ自体が新しい発見につながります。
Q5. もっと深く学ぶには何を読めばいいですか?
「計量経済学」「データサイエンス入門」「統計的因果推論」などのテキストが入門に向いています。Python の場合は『Python ではじめる機械学習』(オライリー)、R の場合は『R で学ぶ統計学』が定番です。本サイトの他の論文も読み比べてみてください。