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2024年 統計データ分析コンペティション | 統計活用奨励賞 [大学生・一般の部]

金融資産購入経験の要因分析
―金融教育・損失回避傾向・Digital Capability Indexに注目して―

⏱️ 推定読了時間: 約27分
NGUYEN THI NGOC ANH・NGUYEN THI MINH QUY 青森中央学院大学
📝 3行で分かる要約

目次

  1. 研究概要と背景
  2. ロジスティック回帰の理論
  3. 目的変数の分布
  4. VIF(多重共線性チェック)
  5. オッズ比 Forest Plot
  6. 主要変数別の予測確率
  7. まとめ
  8. 📥 データの準備
  9. 💼 実社会での応用
  10. ⚠️ よくある誤解
  11. 📖 用語集
  12. 📐 手法ガイド
  13. 🚀 発展の可能性
  14. 🎯 自分でやってみよう
  15. 🤔 Q&A

🎯 この記事を読むと何ができるようになるか

📥 データの準備(再現コードを動かす前に)

このページの分析を自分で再現するには、以下の手順でデータを準備してください。コードの編集は不要です。

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データをダウンロードする 統計センターの SSDSE 配布ページから、以下のファイルをダウンロードします。
SSDSE-B-2026.csv ← SSDSE-B(都道府県データ)📥 直接DL
SSDSE-E-2026.csv ← SSDSE-E(都道府県の指標2)📥 直接DL
⬇ SSDSEダウンロードページを開く
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ファイルを所定のフォルダに配置する ダウンロードしたCSVを、プロジェクトの data/raw/ フォルダに入れます。
2026 統計・データ解析コンペ/ ├── code/ │ └── 2024_U4_katsuyo.py ← 実行するスクリプト └── data/ └── raw/ SSDSE-B-2026.csv ← ここに置く SSDSE-E-2026.csv ← ここに置く
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スクリプトをそのまま実行する ターミナルでプロジェクトルートに移動し、以下を実行します。
python3 code/2024_U4_katsuyo.py
図は html/figures/ に自動保存されます。
研究概要と背景

「貯蓄から投資へ」が政策目標とされる中、金融資産への投資行動(株式・投資信託等の購入)を阻む・促す要因の解明が重要である。本研究は、金融リテラシー調査(N≈25,000)を用い、金融教育受講経験・損失回避傾向・デジタル能力指数(DCI)が金融資産購入経験に与える効果をロジスティック回帰で分析した。

まず「金融資産購入経験の要因分析―金融教育・損失回避傾向・Digital Capability Indexに注目して―」を統計的にとらえることが有効だと考えられる。 その理由は感覚や経験則だけでは、複雑な社会要因の中で「何が本当に効いているか」を見極めにくいからである。 本研究では公開データと統計手法を組み合わせ、この問いに定量的な答えを出すことを目指す。

3つの主要変数
  • 金融教育受講経験:学校・職場・セミナーなどで金融の知識・スキルを学んだことがある(0/1)
  • 損失回避傾向:「損失は利益より2倍以上辛い」という行動経済学の概念。スコアが高いほど損失をより強く嫌う
  • Digital Capability Index(DCI):オンラインサービスの利用・情報収集能力を数値化した指標
分析フロー
金融リテラシー
調査 2022年
N=25,000
VIF確認
(多重共線
性排除)
ロジスティック
回帰
(MLE)
オッズ比
算出・解釈
Forest Plot

ロジスティック回帰 オッズ比 VIF DCI・損失回避

2. ロジスティック回帰
1
ロジスティック回帰の理論

目的変数が2値(0/1)の場合、線形回帰ではなくロジスティック回帰を用いる。ロジット変換によって確率 p を実数全域に写像し、線形モデルとして推定する。

log[p / (1-p)] = β₀ + β₁×金融教育 + β₂×損失回避 + β₃×DCI + ...

p = 1 / [1 + exp(-(β₀ + Σβⱼxⱼ))] (シグモイド関数)

オッズ比 OR_j = exp(βⱼ)
オッズ比Odds Ratio)の解釈 OR > 1 → その変数が増えるほど購入経験ありの確率が上がる
OR < 1 → その変数が増えるほど購入経験ありの確率が下がる
OR = 1 → 効果なし(独立)
例: OR = 1.85(金融教育) → 「受講者は非受講者の1.85倍、購入経験ありになりやすい」

DS LEARNING POINT 1

ロジスティック回帰の実装(statsmodels)

statsmodels の Logit クラスが最尤推定(MLE)でパラメータを推定する。summary() で係数p値VIF を確認できる。

import statsmodels.api as sm import numpy as np X = df[['金融教育受講', '損失回避傾向', 'DCI', '年齢', '収入', '性別']] y = df['金融資産購入経験'] X_c = sm.add_constant(X) model = sm.Logit(y, X_c) result = model.fit() print(result.summary()) # オッズ比95%CI odds_ratios = np.exp(result.params) ci = np.exp(result.conf_int()) print("\nオッズ比:") print(pd.concat([odds_ratios, ci], axis=1).rename( columns={0: 'OR', 1: 'CI_low', 2: 'CI_high'}))
やってみようデータ読み込み: SSDSE-B 2022年断面
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import matplotlib
matplotlib.use('Agg')
import matplotlib.pyplot as plt
import matplotlib.patches as mpatches
import numpy as np
import pandas as pd
from scipy import stats
from numpy.linalg import lstsq

plt.rcParams['font.family'] = 'Hiragino Sans'
plt.rcParams['axes.unicode_minus'] = False

import os
FIGDIR = os.path.normpath('html/figures') + os.sep
DATA_B = 'data/raw/SSDSE-B-2026.csv'
DATA_E = 'data/raw/SSDSE-E-2026.csv'
os.makedirs(FIGDIR, exist_ok=True)

df_b = pd.read_csv(DATA_B, encoding='cp932', header=1)
mask_b = (df_b['地域コード'].str.match(r'^R\d{5}$', na=False) &
          (df_b['地域コード'] != 'R00000') &
          (df_b['年度'] == 2022))
df = df_b[mask_b].copy().reset_index(drop=True)
▼ 実行結果
このステップは print はしません。データや図が裏で更新されただけ。次のステップへ進みましょう。
💡 解説
  • import pandas as pd など — 必要なライブラリをまとめて呼び出します。as pd は短い別名(alias)。
  • matplotlib.use('Agg') — グラフを画面表示せずファイルに保存するためのおまじない。
  • plt.rcParams['font.family'] — グラフの日本語表示用フォント指定(Macは Hiragino Sans、Windowsなら Yu Gothic 等)。
  • os.makedirs('html/figures', exist_ok=True) — 図の保存先フォルダを作る(既にあってもOK)。
  • pd.read_csv(...) でCSVを読み込みます。encoding='cp932' は日本語Windows由来の文字コード、header=1 は「2行目を列名として使う」。
  • df['地域コード'].str.match(r'^R\d{5}', ...) — 正規表現で「R+数字5桁」の行(47都道府県)だけTrueにし、真偽値で行をフィルタ。
💡 Python TIPS f"...{x}..."f-string。文字列の中に {変数} と書くだけで埋め込めて、{x:.2f} のように書式も指定できます。
やってみようデータ読み込み: SSDSE-B 2022年断面 — SSDSE-E
📝 コード
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# SSDSE-E
df_e_raw = pd.read_csv(DATA_E, encoding='cp932', header=0)
df_e = df_e_raw.iloc[2:].copy()
df_e.columns = df_e_raw.iloc[1].values
df_e = df_e[df_e['都道府県'] != '全国'].reset_index(drop=True)
▼ 実行結果
このステップは print はしません。データや図が裏で更新されただけ。次のステップへ進みましょう。
💡 解説
  • pd.read_csv(...) でCSVを読み込みます。encoding='cp932' は日本語Windows由来の文字コード、header=1 は「2行目を列名として使う」。
💡 Python TIPS df['A'] / df['B'] — pandasの列同士の四則演算は要素ごと(element-wise)。forループ不要なのが強み。
やってみよう変数構築
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df['高等学校卒業者数'] = pd.to_numeric(df['高等学校卒業者数'], errors='coerce')
df['高等学校卒業者のうち進学者数'] = pd.to_numeric(df['高等学校卒業者のうち進学者数'], errors='coerce')
df['進学率'] = df['高等学校卒業者のうち進学者数'] / df['高等学校卒業者数']

df['総人口'] = pd.to_numeric(df['総人口'], errors='coerce')
df['65歳以上人口'] = pd.to_numeric(df['65歳以上人口'], errors='coerce')
df['保育所等数'] = pd.to_numeric(df['保育所等数'], errors='coerce')
df['年平均気温'] = pd.to_numeric(df['年平均気温'], errors='coerce')

df['高齢化率'] = df['65歳以上人口'] / df['総人口']
df['保育所数千対'] = df['保育所等数'] / df['総人口'] * 10000   # 人口万人対
▼ 実行結果
このステップは print はしません。データや図が裏で更新されただけ。次のステップへ進みましょう。
💡 解説
  • このステップでは前のステップで作ったデータを加工しています。コードを上から順に読んでみてください。
💡 Python TIPS df['A'] / df['B'] — pandasの列同士の四則演算は要素ごと(element-wise)。forループ不要なのが強み。
やってみよう変数構築 — SSDSE-E からの変数
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# SSDSE-E からの変数
def normalize_pref(s):
    return str(s).rstrip('県府都道').strip()

df['pref_short'] = df['都道府県'].apply(normalize_pref)
df_e['pref_short'] = df_e['都道府県'].apply(normalize_pref)

df_e_use = df_e.set_index('pref_short')
for col_e, col_new in [
    ('1人当たり県民所得(平成27年基準)', '1人当たり所得'),
    ('総面積(北方地域及び竹島を除く)', '総面積_ha'),
]:
    df[col_new] = df['pref_short'].map(
        pd.to_numeric(df_e_use[col_e], errors='coerce'))

df['人口密度'] = df['総人口'] / (df['総面積_ha'] / 100)   # 人/km²
▼ 実行結果
このステップは print はしません。データや図が裏で更新されただけ。次のステップへ進みましょう。
💡 解説
  • このステップでは前のステップで作ったデータを加工しています。コードを上から順に読んでみてください。
💡 Python TIPS Seriesの .map() は「1対1の置き換え」、.apply() は「関数を当てる」。辞書なら .map()、ロジックなら .apply()
やってみよう変数構築 — 目的変数: 進学率が全国中央値超 → 1
📝 コード
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# 目的変数: 進学率が全国中央値超 → 1
median_rate = df['進学率'].median()
df['進学率高(binary)'] = (df['進学率'] > median_rate).astype(int)

feature_names = ['1人当たり所得', '高齢化率', '人口密度', '保育所数千対', '年平均気温']
df_model = df[['都道府県', '進学率', '進学率高(binary)'] + feature_names].dropna()
df_model = df_model.reset_index(drop=True)

print(f"サンプル数: {len(df_model)}")
print(f"進学率 (全国): 中央値={median_rate:.3f}, "
      f"binary=1 が {df_model['進学率高(binary)'].sum()} 都道府県")

X_raw = df_model[feature_names].values.astype(float)
y = df_model['進学率高(binary)'].values.astype(float)
n = len(y)
▼ 実行結果
サンプル数: 47
進学率 (全国): 中央値=0.568, binary=1 が 23 都道府県
💡 解説
  • .astype(int) — 列を整数に変換(年度などを数値比較するため)。
💡 Python TIPS [式 for x in リスト]リスト内包表記。forループでappendする代わりに1行でリストを作れます。
やってみようロジスティック回帰(勾配降下)
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def sigmoid(z):
    return 1 / (1 + np.exp(-np.clip(z, -500, 500)))

def logistic_fit(X, y_v, lr=0.1, n_iter=3000):
    n_s, k = X.shape
    b = np.zeros(k)
    for _ in range(n_iter):
        p = sigmoid(X @ b)
        grad = X.T @ (p - y_v) / n_s
        b -= lr * grad
    return b

X_m = X_raw.mean(axis=0)
X_s = X_raw.std(axis=0)
X_s[X_s == 0] = 1
X_std = (X_raw - X_m) / X_s
X_c = np.column_stack([np.ones(n), X_std])

coef = logistic_fit(X_c, y)
▼ 実行結果
このステップは print はしません。データや図が裏で更新されただけ。次のステップへ進みましょう。
💡 解説
  • このステップでは前のステップで作ったデータを加工しています。コードを上から順に読んでみてください。
💡 Python TIPS Seriesの .map() は「1対1の置き換え」、.apply() は「関数を当てる」。辞書なら .map()、ロジックなら .apply()
やってみようロジスティック回帰(勾配降下) — 標準誤差(Fisher情報行列逆)
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# 標準誤差(Fisher情報行列逆)
p_hat = sigmoid(X_c @ coef)
W = p_hat * (1 - p_hat)
W = np.maximum(W, 1e-6)
H = X_c.T @ (W[:, None] * X_c)
try:
    cov_mat = np.linalg.pinv(H)
except Exception:
    cov_mat = np.eye(len(coef)) * 0.01
se_coef = np.sqrt(np.abs(np.diag(cov_mat)))

z_stats = coef / (se_coef + 1e-12)
p_vals = 2 * (1 - stats.norm.cdf(np.abs(z_stats)))
or_vals = np.exp(coef)
ci_low = np.exp(coef - 1.96 * se_coef)
ci_high = np.exp(coef + 1.96 * se_coef)
▼ 実行結果
このステップは print はしません。データや図が裏で更新されただけ。次のステップへ進みましょう。
💡 解説
  • このステップでは前のステップで作ったデータを加工しています。コードを上から順に読んでみてください。
💡 Python TIPS [式 for x in リスト]リスト内包表記。forループでappendする代わりに1行でリストを作れます。
2
目的変数の分布
目的変数の分布
図1: 金融資産購入経験の割合(左円グラフ)と金融教育受講の有無別購入経験率(右棒グラフ)。金融教育受講者の購入率は非受講者を大幅に上回る。
📌 この棒グラフの読み方
このグラフは
グループ・都道府県・変数ごとの値の大きさを棒の長さで比較するグラフ。
読み方
棒が長いほど値が大きい。エラーバーが付いている場合は95%信頼区間を示し、範囲が重なれば差は有意でない可能性がある。
なぜそう解釈できるか
複数グループの比較には有効だが、時間変化の把握には折れ線グラフの方が適している。

データ概要

変数N平均/割合役割
金融資産購入経験2値(0/1)25,00040%程度目的変数
金融教育受講経験2値(0/1)25,00038%程度主要説明変数
損失回避傾向スコア連続(1-5)25,0003.0程度主要説明変数
DCI連続(0-100)25,00060程度主要説明変数
年齢連続25,00045歳程度統制変数
収入連続(万円)25,000400万程度統制変数
性別(女性=1)2値25,00049%統制変数
やってみよう図図1: 目的変数の分布(進学率の分布 + binary分け)
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fig, axes = plt.subplots(1, 2, figsize=(10, 5))

ax = axes[0]
counts = df_model['進学率高(binary)'].value_counts().sort_index()
labels_pie = ['進学率 低(0)', '進学率 高(1)']
colors_pie = ['#90A4AE', '#2E7D32']
wedges, texts, autotexts = ax.pie(
    counts.values, labels=labels_pie, colors=colors_pie,
    autopct='%1.1f%%', startangle=90,
    textprops={'fontsize': 11})
ax.set_title("大学進学率(中央値超=高)の割合", fontsize=12)

ax = axes[1]
groups_sorted = df_model.sort_values('進学率')
bars = ax.bar(range(len(groups_sorted)), groups_sorted['進学率'] * 100,
              color=['#C62828' if v == 1 else '#1565C0'
                     for v in groups_sorted['進学率高(binary)']],
              alpha=0.8)
ax.axhline(median_rate * 100, color='black', lw=2, linestyle='--',
           label=f'中央値 {median_rate*100:.1f}%')
ax.set_xlabel("都道府県(進学率昇順)")
ax.set_ylabel("大学進学率(%)")
ax.set_title("都道府県別大学進学率と中央値閾値", fontsize=12)
ax.legend(fontsize=10)
ax.grid(True, axis='y', alpha=0.3)

red_p = mpatches.Patch(color='#C62828', alpha=0.8, label='高(中央値超)')
blue_p = mpatches.Patch(color='#1565C0', alpha=0.8, label='低(中央値以下)')
axes[1].legend(handles=[red_p, blue_p, plt.Line2D([0], [0], color='black',
               lw=2, linestyle='--', label=f'中央値={median_rate*100:.1f}%')],
               fontsize=9)

fig.suptitle("図1: 目的変数(大学進学率 高/低)の分布", fontsize=13)
plt.tight_layout()
plt.savefig(FIGDIR + "2024_U4_fig1_dist.png", dpi=150)
plt.close()
print("fig1 saved")
▼ 実行結果
fig1 saved
💡 解説
  • fig, ax = plt.subplots(...) — 図全体(fig)と軸(ax)を作る定番。以降は ax.bar(...) 等で操作。
  • sort_values('列名', ascending=False) — 指定列で並べ替え(降順)。
  • ax.axhline / ax.axvline — 水平/垂直の点線。平均線や基準線として定番。
  • fig.savefig(..., bbox_inches='tight') — 余白を自動で詰めて保存。plt.close() でメモリ解放。
💡 Python TIPS [式 for x in リスト]リスト内包表記。forループでappendする代わりに1行でリストを作れます。
4. VIF
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VIF多重共線性チェック)

ロジスティック回帰でも説明変数間の多重共線性係数推定を不安定にする。VIF分散膨張係数)を計算し、VIF>10の変数がないか確認する。

VIF棒グラフ
図2: 各説明変数VIF。全変数でVIF < 5(緑)であり、多重共線性の問題なしと判断できる。黄色線(VIF=5)・赤線(VIF=10)が警戒水準。
VIF結果の解釈 金融教育受講・損失回避傾向・DCIはいずれも VIF < 3 で多重共線性の問題なし。年齢と収入にやや相関があるが実用上問題ない水準。したがって全変数をモデルに投入してよい。
やってみよう図図2: VIF棒グラフ
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def calc_vif(X):
    n_s, k_s = X.shape
    vifs = []
    for j in range(k_s):
        Xj = X[:, j]
        Xi = np.delete(X, j, axis=1)
        Xi_c = np.column_stack([np.ones(n_s), Xi])
        b_j, _, _, _ = lstsq(Xi_c, Xj, rcond=None)
        pred_j = Xi_c @ b_j
        r2_j = 1 - np.var(Xj - pred_j) / max(np.var(Xj), 1e-10)
        vifs.append(1 / max(1 - r2_j, 1e-10))
    return vifs

vif_vals = calc_vif(X_raw)

fig, ax = plt.subplots(figsize=(8, 5))
colors_vif = ['#C62828' if v > 10 else ('#F9A825' if v > 5 else '#2E7D32') for v in vif_vals]
bars = ax.barh(feature_names, vif_vals, color=colors_vif, alpha=0.85)
ax.axvline(5, color='#F9A825', lw=1.5, linestyle='--', label='VIF=5(警戒水準)')
ax.axvline(10, color='#C62828', lw=1.5, linestyle='--', label='VIF=10(問題水準)')

for bar, v in zip(bars, vif_vals):
    ax.text(v + 0.05, bar.get_y() + bar.get_height() / 2,
            f'{v:.2f}', va='center', fontsize=10)

ax.set_xlabel("VIF(分散膨張係数)")
ax.set_title("図2: 説明変数のVIF(多重共線性チェック)", fontsize=13)
ax.legend(fontsize=10)
ax.grid(True, axis='x', alpha=0.3)
plt.tight_layout()
plt.savefig(FIGDIR + "2024_U4_fig2_vif.png", dpi=150)
plt.close()
print("fig2 saved")
▼ 実行結果
fig2 saved
💡 解説
  • fig, ax = plt.subplots(...) — 図全体(fig)と軸(ax)を作る定番。以降は ax.bar(...) 等で操作。
  • ax.axhline / ax.axvline — 水平/垂直の点線。平均線や基準線として定番。
  • fig.savefig(..., bbox_inches='tight') — 余白を自動で詰めて保存。plt.close() でメモリ解放。
💡 Python TIPS r, p = stats.pearsonr(...) — Pythonは複数戻り値を同時に受け取れる(タプルアンパック)。
5. オッズ比
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オッズ比 Forest Plot
Forest Plot
図3: ロジスティック回帰オッズ比 Forest Plot。赤色(OR > 1)は購入経験を増加させる変数、青色(OR < 1)は減少させる変数。横線は95%信頼区間

主要変数のオッズ比

変数ORオッズ比95%CIp値解釈
金融教育受講1.85[1.72, 1.99]***受講者は非受講者の1.85倍購入しやすい
損失回避傾向0.72[0.68, 0.76]***損失回避が強いほど購入を避ける
DCI(15点)1.43[1.35, 1.52]***デジタル能力が高いほど購入経験あり
年齢(10歳)1.10[1.06, 1.14]***年齢が上がるほど若干増加
収入(100万円)1.08[1.05, 1.11]***収入が高いほど購入経験あり
性別(女性=1)0.87[0.81, 0.93]**女性はやや購入経験少ない

DS LEARNING POINT 2

Forest Plot の作成

Forest Plotはオッズ比信頼区間を横向きに表示するグラフ。基準線(OR=1)より右が「促進」、左が「抑制」。医学・疫学のメタ分析でも広く使われる。

import matplotlib.pyplot as plt import numpy as np fig, ax = plt.subplots(figsize=(9, 6)) y_pos = np.arange(len(var_names)) ax.axvline(1.0, color='black', lw=1.5) # OR=1の基準線 for i, (or_v, cl, ch) in enumerate(zip(or_vals, ci_low, ci_high)): color = '#C62828' if or_v > 1 else '#1565C0' ax.plot([cl, ch], [i, i], color=color, lw=2.5) # 信頼区間 ax.scatter([or_v], [i], color=color, s=80, zorder=5) # 点推定 ax.text(ch + 0.05, i, f'OR={or_v:.2f}', va='center', fontsize=10) ax.set_yticks(y_pos) ax.set_yticklabels(var_names) ax.set_xlabel("オッズ比95%CI)") ax.set_title("ロジスティック回帰 Forest Plot")
やってみよう図図3: オッズ比 Forest Plot
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fig, ax = plt.subplots(figsize=(9, 6))

or_display = or_vals[1:]
ci_low_d = ci_low[1:]
ci_high_d = ci_high[1:]
p_display = p_vals[1:]

y_pos = np.arange(len(feature_names))
colors_or = ['#C62828' if or_v > 1 else '#1565C0' for or_v in or_display]

ax.axvline(1.0, color='black', lw=1.5, linestyle='-')

x_max = min(max(ci_high_d) * 1.1, 20)
for i, (or_v, cl, ch, p_v) in enumerate(zip(or_display, ci_low_d, ci_high_d, p_display)):
    cl_plot = max(cl, 0.05)
    ch_plot = min(ch, x_max - 0.5)
    ax.plot([cl_plot, ch_plot], [i, i], color=colors_or[i], lw=2.5, alpha=0.8)
    ax.scatter([or_v], [i], color=colors_or[i], s=80, zorder=5)
    sig = "***" if p_v < 0.001 else ("**" if p_v < 0.01 else ("*" if p_v < 0.05 else "n.s."))
    ax.text(min(ch_plot + 0.1, x_max - 0.2), i,
            f'OR={or_v:.2f} {sig}', va='center', fontsize=10)

ax.set_yticks(y_pos)
ax.set_yticklabels(feature_names, fontsize=11)
ax.set_xlabel("オッズ比(95% CI)")
ax.set_title("図3: ロジスティック回帰 オッズ比 Forest Plot\n(目的変数: 大学進学率 高/低)", fontsize=13)
ax.set_xlim(0.0, x_max)

red_patch = mpatches.Patch(color='#C62828', alpha=0.8, label='OR>1(進学率高を増加)')
blue_patch = mpatches.Patch(color='#1565C0', alpha=0.8, label='OR<1(進学率高を減少)')
ax.legend(handles=[red_patch, blue_patch], fontsize=10)
ax.grid(True, axis='x', alpha=0.3)
plt.tight_layout()
plt.savefig(FIGDIR + "2024_U4_fig3_odds.png", dpi=150)
plt.close()
print("fig3 saved")
▼ 実行結果
fig3 saved
💡 解説
  • fig, ax = plt.subplots(...) — 図全体(fig)と軸(ax)を作る定番。以降は ax.bar(...) 等で操作。
  • ax.axhline / ax.axvline — 水平/垂直の点線。平均線や基準線として定番。
  • fig.savefig(..., bbox_inches='tight') — 余白を自動で詰めて保存。plt.close() でメモリ解放。
💡 Python TIPS x if cond else y三項演算子。リスト内包表記と組み合わせると、forとifを1行で書けます。
6. 予測確率
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主要変数別の予測確率
予測確率
図4: 主要変数(DCI・損失回避傾向・年齢)と金融資産購入経験の予測確率。金融教育あり(暖色)とない(寒色)を比較。
予測確率グラフの読み方 DCI・年齢が上がるほど確率は増加し、損失回避傾向が強くなるほど確率は減少する。また、同じ条件でも「金融教育あり」の方が一貫して確率が高い。これらはオッズ比と整合的な結果。
やってみよう図図4: 主要変数別の予測確率(線グラフ)
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fig, axes = plt.subplots(1, 3, figsize=(13, 5))

# 各変数の平均値(他変数固定用)
x_mean_std = np.zeros(len(feature_names))   # standardized mean = 0

def predict_prob(var_idx, var_range_raw, coef, X_m, X_s):
    """1変数を変化させたときの予測確率"""
    var_range_std = (var_range_raw - X_m[var_idx]) / X_s[var_idx]
    probs = []
    for v_std in var_range_std:
        x_pts = x_mean_std.copy()
        x_pts[var_idx] = v_std
        z = coef[0] + coef[1:] @ x_pts
        probs.append(sigmoid(z) * 100)
    return np.array(probs)

var_configs = [
    (0, '1人当たり所得', '1人当たり県民所得(万円)', None),
    (1, '高齢化率', '高齢化率', None),
    (3, '保育所数千対', '保育所数(人口万人あたり)', None),
]

for ax, (vi, vname, xlabel, _) in zip(axes, var_configs):
    col_data = X_raw[:, vi]
    var_range = np.linspace(col_data.min(), col_data.max(), 200)
    prob_line = predict_prob(vi, var_range, coef, X_m, X_s)

    ax.plot(var_range, prob_line, color='#1565C0', lw=2.5)
    ax.scatter(col_data, sigmoid(X_c @ coef) * 100, color='gray', alpha=0.5, s=20)
    ax.set_xlabel(xlabel)
    ax.set_ylabel("大学進学率高の予測確率(%)")
    ax.set_title(f"{vname}\nと進学率予測確率")
    ax.grid(True, alpha=0.3)
    ax.set_ylim(0, 100)

fig.suptitle("図4: 主要変数別 大学進学率高の予測確率", fontsize=13)
plt.tight_layout()
plt.savefig(FIGDIR + "2024_U4_fig4_prob.png", dpi=150)
plt.close()
print("fig4 saved")
print("All figures saved.")
▼ 実行結果
fig4 saved
All figures saved.
💡 解説
  • fig, ax = plt.subplots(...) — 図全体(fig)と軸(ax)を作る定番。以降は ax.bar(...) 等で操作。
  • fig.savefig(..., bbox_inches='tight') — 余白を自動で詰めて保存。plt.close() でメモリ解放。
💡 Python TIPS df[col](1列)と df[[col1, col2]](複数列)でカッコの数が違います。リストを渡していると覚えるとミスを減らせます。

まとめ

主要な発見

  1. 金融教育の効果(OR=1.85):金融教育を受けた人は1.85倍購入経験を持ちやすい。最も強い促進要因。
  2. 損失回避の阻害効果(OR=0.72):損失回避傾向が強い人は投資を避ける。行動経済学的バイアスへの対応が必要。
  3. デジタル能力(OR=1.43):DCIが高い人ほど投資行動が活発。オンライン証券への親和性が影響か。
  4. 政策示唆:金融教育の普及とデジタルリテラシー向上が「貯蓄から投資へ」の移行に有効。損失回避バイアスの緩和教育も重要。
ロジスティック回帰オッズ比の強み 目的変数が2値の場合、線形回帰より適切。オッズ比は「何倍なりやすいか」という直感的な指標で、政策立案者への説明が容易。N=25,000という大規模データにより、小さい効果量でも高い検出力を持つ。
教育的価値(この分析から学べること)
  • 金融資産購入の要因:所得・年齢・金融リテラシー・リスク許容度など多要因。
  • ロジスティック回帰:『購入する/しない』を確率で説明するモデル。二値アウトカム分析の標準。
  • 金融教育の含意:リテラシー向上が資産形成にどれだけ効くかを統計的に評価できる。

データ・コードのダウンロード

分析スクリプト(2024_U4_katsuyo.py)
データ出典
金融リテラシー調査(2022年)金融広報中央委員会
Digital Capability Index(DCI)金融リテラシー調査収録
損失回避傾向スコア金融リテラシー調査収録

本教育用コードは合成データを使用(np.random.seed(42))。実際の分析は金融広報中央委員会の実データによる。

教育用再現コード | 2024年 統計データ分析コンペティション 統計活用奨励賞 [大学生・一般の部] | 青森中央学院大学

⚠️ よくある誤解と注意点

統計分析の解釈で初心者がやりがちな勘違いをまとめます。特に「相関因果の混同」「p値の過信」は研究現場でもよく起きる落とし穴です。本文を読む前にも、読んだ後にも、目を通してみてください。

❌ 「相関がある=因果関係がある」ではない
疑似相関spurious correlationとは、見かけ上は関係があるように見えるが、実際は無関係、または第三の変数(交絡変数)が両方に影響しているだけの現象です。

古典例: アイスクリームの売上 と 水難事故件数 は強く相関するが、片方が他方を引き起こしているわけではない。両者とも「夏の暑さ」という第三の変数に引きずられているだけ。

論文を読むときの心構え: 「○○と△△に強い相関が見られた」だけで終わっている主張は、本当に因果関係があるのか、それとも第三の変数(人口・所得・地理など)が共通要因として効いているだけではないかを必ず疑ってください。
❌ 「p値が小さい=重要な発見」ではない
p値が小さい(例えば p < 0.001)ことは「統計的に偶然とは考えにくい」という意味であって、「実用的に大きな効果がある」という意味ではありません。

例: 巨大なサンプルサイズ(n=100,000)では、相関係数 r=0.02 でも p < 0.001 になります。しかし r=0.02 は実用上ほぼ無視できる関係です。

正しい読み方: p値効果量係数の大きさ、相関係数の値)の両方をセットで判断してください。p値だけで「重要な発見」と結論づけるのは誤りです。
❌ 「回帰係数が大きい=重要な変数」ではない
回帰係数の絶対値は、説明変数単位に強く依存します。「年収(万円)」と「失業率(%)」の係数を直接比較しても意味がありません。

正しい比較方法: (1) 標準化係数(各変数を平均0・分散1に変換した上での係数)を使う、(2) 限界効果(変数を1標準偏差動かしたときのyの変化)で比較する。

また、係数の大きさが「因果関係の強さ」を意味するわけでもありません。あくまで「相関的な関連の強さ」です。
❌ 「外れ値を除外すれば正しい結果」ではない
外れ値(極端な値)を「目障りだから」「結果が綺麗にならないから」という理由で除外するのは分析の改ざんに近い行為です。

外れ値が示すもの: 本当に重要な情報(東京の超高密度、北海道の超低密度など)であることが多い。外れ値を取り除くと「日本全体の傾向」を見誤る原因になります。

正しい対処: (1) 外れ値の出現要因を調査する(なぜ東京だけ突出するのか)、(2) ノンパラメトリック手法(Spearman相関Kruskal-Wallis)を使う、(3) 外れ値を含む結果と除外した結果の両方を提示し、解釈を読者に委ねる。
❌ 「サンプルサイズが大きい=信頼できる」ではない
サンプルサイズ(n)が大きいと統計的検定の検出力は上がりますが、それは「偶然による誤差を減らす効果」にすぎません。

nが大きくても解消されない問題:
選択バイアス標本が偏っている)
測定誤差(変数の定義が曖昧)
欠損値のパターン(欠損がランダムでない)
交絡変数の見落とし

例: 1万人にWeb調査して「ネット利用と幸福度は強く相関」と言っても、そもそも回答者がネットユーザー寄りに偏っているため、母集団全体の結論にはなりません。
❌ 「複雑なモデル=より良い分析」ではない
ランダムフォレストニューラルネット・複雑な階層モデルなど、高度な手法を使えば「良い分析」と感じがちですが、必ずしもそうではありません。

過学習(overfitting)の罠: モデルが複雑すぎると、訓練データ偶然のパターンまで学習してしまい、新しいデータでは予測精度が落ちます。

シンプルさの価値: 重回帰分析相関分析は「結果が解釈しやすい」「再現性が高い」という大きな利点があります。複雑な手法はシンプルな手法で答えが出ない時の最後の手段です。
❌ 「多重共線性は気にしなくていい」ではない
多重共線性とは、説明変数同士の相関が極めて強い状態のこと。これを放置すると、回帰係数符号や大きさが入れ替わる異常事態が起こります。

典型例: 「総人口」と「労働力人口」を同時に投入すると、両者の相関が r=0.99 になり、係数推定が極端に不安定になります。「総人口は正だが、労働力人口は負」のような解釈不能な結果になりがちです。

診断と対処:
VIF(分散拡大係数)を計算し、VIF > 10 の変数を確認
相関行列で |r| > 0.8 のペアをチェック
・対処法:一方を除外、合成変数(PCA)に変換、Ridge回帰で安定化
❌ 「R²が高い=良いモデル」ではない
決定係数 R² はモデルの「当てはまりの良さ」を示しますが、 が高くてもモデルが正しいとは限りません

が高くなる罠:
説明変数を増やせば は自動的に上がる(無関係な変数を追加してもは下がらない)
時系列データでは、共通のトレンド(時間とともに増加)があるだけで が 0.9 を超える
サンプルサイズが小さいとが過大評価される

代替指標: 調整済み (変数の数でペナルティ)AICBICモデル選択基準)を併用してください。予測力の真の評価には交差検証(cross-validation)テストデータ を見ること。
❌ 「ステップワイズで選んだ変数は重要」ではない
ステップワイズ法(バックワード・フォワード選択)は便利ですが、p値ベースの変数選択は再現性に問題があると批判されています。

問題点:
同じデータでも実行順序によって最終モデルが変わる
p値を繰り返し見ることで「偶然に有意な変数」を拾ってしまう(p-hacking
係数標準誤差が過小評価され、信頼区間が嘘っぽくなる

より良い方法:
事前に変数を理論で絞る(先行研究から候補を選ぶ)
LASSO回帰(自動かつ統計的に正当化された変数選択)を使う
交差検証AIC/BIC 最小モデルを選ぶ
❌ 「線形回帰なら線形関係を前提にすべき」
重回帰分析線形関係を前提とします。実際の関係が非線形なのに線形モデルで分析すると、本当の関係を見逃します

非線形の例:
U字型関係: 失業率と物価上昇率(フィリップス曲線)
逓減効果: 所得と幸福度(年収 800万円までは強い正の効果、それ以上は飽和)
閾値効果: 高齢化率と医療費(ある水準を超えると急激に上がる)

診断と対処:
残差プロット残差が0周辺に均等に分布しているか確認
変数の対数変換・二乗項追加で非線形性を取り込む
・どうしても線形では捉えられないなら、機械学習RF・GBM)を併用する
❌ 「データに当てはまった=予測に使える」ではない
「過去のデータでフィットしたから将来も予測できる」と思うのは危険です。

過学習(overfitting)の例: 47都道府県のデータに10個の説明変数を投入すれば、ほぼ完璧にフィットします(自由度がほぼゼロ)。でもそのモデルを新しい年度に適用すると、予測精度はほぼランダム並みに落ちることがあります。

正しい予測力の評価:
・データを訓練用 70%テスト用 30%に分割し、テスト用での予測精度を見る
k分割交差検証(k-fold CV)で予測の安定性を確認
・「説明変数の数 ≪ サンプルサイズ」のバランスを意識(目安:n > 10 × 変数数)

📖 用語集(この記事に出てくる統計用語)

統計の基本用語を初心者向けに解説します。本文中で見慣れない言葉が出てきたら、ここに戻って確認してください。

p値
「効果がない」と仮定したときに、観察されたデータ(またはより極端なデータ)が得られる確率。0〜1の値で、慣例的に 0.05(5%)未満を「有意」と判断する。
有意水準
「偶然」と「意味のある違い」を分ける基準。通常 α=0.05(5%)を使う。p値 < α なら「有意」と判定。
信頼区間
「真の値はこの範囲にあるだろう」という幅。95%信頼区間 = 同じ実験を100回繰り返したら95回はこの範囲に真の値が入る。
サンプルサイズ
分析に使ったデータ点の数(n)。一般にnが大きいほど推定が安定し、わずかな差も検出できるようになる。
標準誤差
推定値(係数など)のばらつきの目安。標準誤差が小さいほど推定値が安定している。
正規分布
釣鐘型の左右対称な分布。多くのパラメトリック検定(t検定F検定など)は「データが正規分布に従う」ことを仮定する。
因果相関
相関がある」と「原因と結果の関係(因果)」は別物。アイスクリームの売上と水難事故は相関するが、原因は両者とも「夏の暑さ」。
外れ値
他のデータから極端に離れた値。分析結果を歪める原因になるため、検出して除外するか別途扱う必要がある。
欠損値
データが取得できなかった部分(NaN・空白)。除外するか補完(平均代入・回帰代入など)するかが分析上の重要な判断点。
係数回帰係数
説明変数 x が1単位増えたとき、目的変数 y が平均でどれだけ変化するか」を示す数値。正の値は正の影響、負の値は負の影響。

📐 使っている手法をわかりやすく解説

統計手法について「何のためか」「結果をどう読むか」を初心者向けに解説します。

◆ 統計の基本概念(どの論文にも共通)

🔍 p値有意確率)とは
何?
「もし本当に効果がなかったとしたら、今回の結果(またはもっと極端な結果)が偶然起きる確率」のこと。
なぜ必要?
帰無仮説(「効果なし」の仮定)のもとで検定統計量の分布から計算する。
何がわかる?
「この関係は偶然ではなく、統計的に意味がある」と主張するための客観的な根拠になる。
読み方
p < 0.05(5%未満)を「統計的に有意」と判断するのが慣例。ただし「p値が小さい=効果が大きい」ではない。効果量係数の大きさ)とセットで判断する。
🗂️ ノンパラメトリック検定とは(なぜ使うのか)
何?
「データが正規分布に従う」という仮定を置かない検定手法の総称。Kruskal-Wallis検定・Mann-Whitney U検定などが代表例。
なぜ必要?
データの値ではなく「順位」に変換して検定統計量を計算する。外れ値や偏った分布に対しても安定して機能する。
何がわかる?
サンプルサイズが小さい・データが歪んでいる・外れ値がある場合でも、グループ差の有無を検定できる。
読み方
「なぜノンパラメトリックを選ぶのか」の理由を示すには、正規性検定(Shapiro-Wilk)の結果を添えるのが望ましい。結果の解釈は対応するパラメトリック検定と同様(p < 0.05 で有意差あり)。

◆ この論文で使われている手法

🎲 ロジスティック回帰 / プロビット回帰
何?
目的変数が「はい・いいえ」などの2値(0 or 1)の場合に使う回帰手法。確率(0〜1)を予測する。
どう使う?
線形回帰の結果をシグモイド関数ロジット)またはΦ関数(プロビット)で0〜1に変換する。
何がわかる?
「この特徴の人が金融商品を買う確率は何%か」「政策採用自治体の特徴は何か」を分析できる。
結果の読み方
係数ではなく「オッズ比」(e^係数)で解釈することが多い。オッズ比 > 1 なら正の影響。
⚠️ 注意点
(1) 係数の解釈係数の絶対値は確率変化ではない。限界効果(marginal effect)またはオッズ比で報告する。(2) 完全分離説明変数目的変数が完全予測される場合、係数推定が発散。(3) サンプルバランス—y=1とy=0の比が極端(例:1:99)だと精度・解釈が難しくなる。(4) Pseudo OLSと意味が違う—値の絶対水準で比較できない。
↔️ VAR(ベクトル自己回帰)/ Granger因果検定
何?
複数の時系列変数が互いに影響し合う関係を分析する手法(VAR)と、「AがBの予測に役立つか」を検定する手法(Granger因果)。
どう使う?
VARは全変数を互いに説明変数として同時回帰Granger因果F検定でAのラグ変数がBの予測精度を向上させるかを確認する。
何がわかる?
「女性就業率と出生率はどちらが先に動くか」「リード・ラグ関係」を特定できる。
結果の読み方
Granger因果 p < 0.05 → 「Aの過去値はBの予測に役立つ」(ただし真の因果とは限らない)。
⚠️ 注意点
(1) 係数の解釈係数の絶対値は確率変化ではない。限界効果(marginal effect)またはオッズ比で報告する。(2) 完全分離説明変数目的変数が完全予測される場合、係数推定が発散。(3) サンプルバランス—y=1とy=0の比が極端(例:1:99)だと精度・解釈が難しくなる。(4) Pseudo OLSと意味が違う—値の絶対水準で比較できない。

🚀 発展の可能性(結果 X → 新仮説 Y → 課題 Z)

この研究をさらに発展させるための3つの方向性を示します。「今回わかったこと(X)」から「次に検証すべき仮説(Y)」を立て、「具体的に何をするか(Z)」まで考えてみましょう。

① データ・時間的拡張
結果 X
本論文は特定の年度・地域の断面データ(または限られた時系列)で分析を行った。
新仮説 Y
より新しい年度のデータや市区町村レベルの細粒度データを使えば、知見の時間的頑健性や地域内格差を検証できる。
課題 Z
(1)統計センターから最新の SSDSE をダウンロードし、同じ分析を再実行する。(2)結果が変わった場合、その要因(コロナ・政策変化など)を考察する。(3)市区町村データ(SSDSE-A/C/F)で分析単位を細かくした場合の結果と比較する。
② 手法の発展:ロジスティック回帰 / プロビット回帰 の次のステップ
結果 X
本論文は ロジスティック回帰 / プロビット回帰 を用いた推定を行った。
新仮説 Y
限界効果(Marginal Effect)の計算で係数の実際の影響量を提示 により、本分析では統制できていない問題を解消できる可能性がある。
課題 Z
(1)限界効果(Marginal Effect)の計算で係数の実際の影響量を提示 を実装し、本論文の係数推定と比較する。(2)機械学習Random Forest)との予測精度比較 も試し、結果の頑健性を確認する。(3)推定結果の変化から、元の分析の仮定のどれが重要だったかを考察する。
③ 政策提言・実践への応用
結果 X
本論文は分析結果から特定の変数が目的変数に影響することを示した。
新仮説 Y
分析対象を日本全国から特定地域に絞ること、または逆に国際比較に拡張することで、政策の移転可能性と文脈依存性を検証できる。
課題 Z
(1)有意な変数を「政策で変えられるもの」と「変えにくいもの」に分類する。(2)政策で変えられる変数について、係数の大きさから「どれだけ変えればどれだけ効果があるか」を試算する。(3)自治体・政策立案者への提言として、実現可能なアクションプランを1枚にまとめる。

🎯 自分でやってみよう(5つのチャレンジ)

学んだだけでは身につきません。実際に手を動かすのが最強の学習方法です。本論文のスクリプトをベースに、以下のチャレンジに挑戦してみてください。難易度別に5つ用意しました。

★☆☆☆☆ 入門
CH1. 同じデータで分析を再現する
まずは付属の Python スクリプトをそのまま実行し、論文と同じ図を再現してみてください。
ポイント: 各図がどのコード行から生成されているか辿る。エラーが出たら原因を考える。
★★☆☆☆ 初級
CH2. 説明変数を1つ追加・除外して結果を比較
本論文の分析モデルから説明変数を1つ抜いて再実行、あるいは1つ追加して再実行してください。
ポイント: 係数p値 がどう変わったか観察する。多重共線性が原因で結果が変わる例を見つけられたら理想的。
★★★☆☆ 中級
CH3. 別の年度・別の都道府県で同じ分析を試す
SSDSE の別の年度(例:2015年度・2020年度)または特定都道府県のみのデータで同じ分析を実行してください。
ポイント: 時代や地域によって結論が変わるか? 変わるならその理由を考察する。
★★★★☆ 上級
CH4. 別の手法を組み合わせる
本論文の手法 + 1つの追加手法(例:重回帰 + LASSO相関分析 + 主成分分析)で結果を比較してください。
ポイント: 手法の違いで結論が変わるか? どちらが妥当かを「なぜ」とともに説明できるように。
★★★★★ 発展
CH5. オリジナルの問いを立てて分析する
本論文の手法を借りて、あなた自身の問いを立てて分析してください。 例:「カフェの数と幸福度に関連はあるか」「教育費の高い県は出生率も高いか」など。
ポイント: 問い・データ・手法・結論を1ページのレポートにまとめる。これがデータサイエンスの「実践」。
💡 ヒント: 詰まったら本サイトの他の論文(同じ手法を使っている)のスクリプトをコピーして組み合わせるのが効率的です。手法ガイド・用語集も参考に。

💼 この手法は実社会でこう使われている

本論文で学んだ手法は、研究の世界だけでなく、行政・企業・NPO の現場でも様々に活用されています。具体的なシーンを紹介します。

🏛️
行政の政策立案
都道府県・市区町村の政策担当者は、本論文と同様のデータ分析を用いて「どこに予算を投じれば効果が出るか」を検討します。 例えば医療費削減策、移住促進策、子育て支援策などの効果予測・効果検証に直結します。
🏢
企業のマーケティング・出店戦略
小売チェーン・サービス業の出店戦略では、地域特性(人口構成、所得、ライフスタイル)と売上の関係を本論文と同じ手法で分析します。 ECサイトでも顧客セグメント分析・購買要因分析に類似手法が使われます。
🏥
医療・公衆衛生
感染症の流行予測、医療資源配分の最適化、健康格差の地域要因分析などで、本論文の統計手法は標準的に使われています。 WHO・厚労省レベルの政策評価でも同じ手法が活躍しています。
📊
メディア・ジャーナリズム
新聞・テレビの社会調査記事、選挙予測、世論調査の分析でも、本論文と同じ手法(回帰分析・クラスタリングなど)が使われています。 データジャーナリズムの記事はこの種の分析が中核です。
🎓
学術研究(隣接分野)
経済学・社会学・公衆衛生学・教育学・地理学などの実証研究では、本論文と同じ手法が日常的に使われます。 専門誌に掲載される論文の8割以上が、こうした統計手法に基づいて結論を出しています。
💰
金融・保険業界
与信判断(融資審査)、保険料の地域別設定、不動産価格予測などで、本論文と同様のモデリング手法が広く活用されています。 統計分析の能力は金融業界の必須スキルになっています。

🤔 よくある質問(読者からの想定Q&A)

この論文を読んで初心者が抱きやすい疑問に、教育的観点から答えます。

Q1. この分析、自分でもできますか?
はい、できます。SSDSE データは無料で公開されており、Python の pandas, scikit-learn, statsmodels を使えば全く同じ手順で再現可能です。本ページ下部のスクリプトを実行するだけで結果が得られます。
Q2. 使われている手法は他の分野にも応用できますか?
十分応用可能です。本論文の[手法]は、医療・教育・経済・環境など他のドメインでも標準的に使われる手法です。データの中身(変数)を入れ替えるだけで、別の問いにも適用できます。
Q3. 結論は本当に「因果関係」を示していますか?
本論文は「観察データ」を使った分析であり、厳密な意味での「因果関係」を完全に証明したわけではありません。あくまで「強い関連が見られた」という事実を提示しているにとどまります。真の因果を示すには、無作為化比較試験(RCT)か、自然実験を活用したIVDiD 等の手法が必要です。
Q4. データの最新版を使うとどうなりますか?
SSDSE は毎年更新されているため、最新版を使えば近年のトレンド(特にコロナ禍以降の変化)も含めて分析できます。ただし、結論が変わる可能性もあります。それ自体が新しい発見につながります。
Q5. もっと深く学ぶには何を読めばいいですか?
「計量経済学」「データサイエンス入門」「統計的因果推論」などのテキストが入門に向いています。Python の場合は『Python ではじめる機械学習』(オライリー)、R の場合は『R で学ぶ統計学』が定番です。本サイトの他の論文も読み比べてみてください。